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コサイトウが行く!

第10回
地域の仲間と、一緒に子育て 石野有紀子さん

2016年2月19日 公開

コサイトウです。
私、初めてジェルネイルというものに挑戦してみました♪

 石野さんネイル

手先を自分らしく着飾ると、気分も上がりますね♪
このネイルを施術してくれたのが今回の主役、石野有紀子さんです。

 石野さん一人

小学5年生の女の子と、小学3年生の男の子のママで、現在は仙川のレンタルスペースや自宅で「ネイルサロン たまリバネイル」を運営しています。サバサバとして明るい方で、ネイルの仕事をとっても楽しんでいる様子。

 

「たぶん私、ネイルの仕事で人生のバランスをとっているんでしょうね。この時間がないと、子どもにかかりきりになってしまうので」

 

どうやら、お子さんの育児に苦労をされているようです。さっそく、石野さんの子育てについてお話を聞いてみましょう。

 

息子くんの誕生

 

切迫早産で23週と6日、736グラムで生まれた息子くん。生まれた直後からNICUで集中治療を受けました。

 

入院中も脳内出血を起こして手術。その後水頭症も患い手術をするも、結果が思わしくなく子ども専門病院へ転院。
3歳まで5回ほど手術を繰り返し、九死に一生を得る出来事をいくつも越えてきました。

 

「ただ、目の前で起きることを一つ一つ乗り越えるしかなく、他に何も考えられないまま前に進んできました。落ち込む暇はなかったです。」

 

様々な苦難を乗り越えて生きている息子くんを見ているうちに、「この子は最後まで自分の人生を強く生き抜く為に、ただシンプルに生きている」と感じたそう。親が先を案じても、息子くんの人生はおそらく何も変わらないだろう、と思うようになりました。

 

「いっしょに育てている」感覚

 

生まれてすぐ入院していた息子くんの面会や通院の時、まだ2歳だった長女ちゃんの面倒を見てくれたのは、西部児童館で知り合った近所のママ友たちでした。

 

「友人に恵まれていると、これだけは自信をもって言えます」

 

長女ちゃんが赤ちゃんの時からの付き合いで、息子くんが抱える事情も知っていたママ友たち。息子くんがNICUに長い期間入院している中、子連れで面会ができず困っていた石野さんを、世話好きママが率先して「明日みんなで遊ぶんだけど、長女ちゃんを見ててあげるから、面会に行っておいで」と送り出してくれました。

石野さん室内  ▶長女ちゃんはアート教室に通っているそう

 

「なにかあったら言ってね」と声をかけてくれる人はたくさんいましたが、石野さんは知人に頼らず、国領の「すこやか」で実施されている一時保育などでしのごうと考えていました。

 

「まず長女を預けること自体が心配でした。それに、友人も自分の子どもの世話をしながら預かっているわけで、その間に友人の子がけがをしたり、事故にあったら申し訳ないという気持ちもありました」

 

しかし、具体的に提案や段取りをして長女ちゃんを預かってくれた友人たちが、そんな心配をはねのけてくれました。

 

「ママたちが3人4人集まるとすごいパワーなんですよね。連携プレーで、がっちり長女の受け入れ態勢ができていました」

 

最初は遠慮していましたが、「いつか自分が力になれる時が来たらお返ししていこう」と、自分とママ友を信じて甘えられるようになりました。

 

う〜ん。こういう関係ってなかなか築けないから、とってもうらやましいな。

 

「ママ友たちは、たまたま実家が遠い人が多かったこともあり、お互いに助け合ううちに仲良くなっていきました。そしてだんだんと一緒に育てていこうっていう感覚を持てるようになったのだと思います」

 

ふむふむ。お互い様だからこそ、自然に助け合えたのね。でも、コサイトウはつい「私ばかり頼りすぎちゃって悪いな」と考えてしまいがちだけど、そのあたりはどんな風に気持ちを整理したのかしら?

 

「1つ助けたから1つ返すとか、そんな計算も効かないくらいたくさん助け合うようになっていったから、そのうちみんなが幸せになればいいねっていう大きな気持ちになりました」

 

今でもその仲間たちは大事な存在で、その子どもたちも石野さんにとっては大切な「私のかわいい子ども」。長女ちゃんも、お母さんに言えない相談をその友人に打ち明けたり、友人の子どもを姉妹のように感じて信頼していたりと、「家族」という枠組みを超えた絆が生まれています。

 石野さんにゃん    ▶大事な家族はここにも。癒しの「マイちゃん」

 

地域に自分の子どもを見守り、成長を喜んでくれる人たちがいる。親にとっても、子どもにとっても、こんなに安心できる環境はないわよね。

 

気持ちに寄り添う子育て

 

息子くんが入院・手術を繰り返すなど、予測不能の赤ちゃん時代を過ごしていた石野さん一家。そんな生活が落ち着き、息子くんが保育園に通い始めた3歳くらいから、ようやく「明るい性格の子なんだな」「甘えん坊なんだな」という個性が見えてきたそう。
そして、同時に広汎性発達障害を持っていることも分かってきました。

 

現在は特別支援学級に通う息子くんを夫婦交代で送り迎えしています。広汎性発達障害を持つ子に多い「気持ちや場面の切り替えが苦手」という特性からか、登校前に毎朝大泣きする息子くんに手を焼いているようです。

 

「それはもう、今生の別れのような泣き方で(笑)。毎日なだめるのが大変です」

 

ネイルの仕事もあるため学童クラブにも通所、少しでも生活能力が伸びれば、と放課後等デイサービスにも通わせています。しかし、外よりもおうちが大好きな息子くん。体も大きくなり、自己主張も出てきた最近では、行き渋りをする息子くんを力づくで連れていくわけにもいかず、本人の気持ちと親の思いの両立が難しい場面が増えてきたそう。

 

しばらくは「成長すれば解決するものなのかな」と思っていましたが、実はそれもまた息子くんの特性のひとつだと気づいた石野さん。
集団よりもひとりの時間が好き、というのは本人の特性で、親がいくら焦っても変えることができないもの。ならば苦手なことは無理強いせず、本人に合ったやり方で成長していけばいい、と捉え方が変わりました。

 

あれ、この考え方って特別でも何でもなくて、子育て全般に通じることよね。

 

自立とは「親以外の手を借りる」こと

 

「障害があっても、普通の子と同じようにいずれは親から独立して、この地域で普通に暮らしていけるように、というのが願いです」

 

将来、1人で生きていくことが難しいと思われる息子くんに対する一番の心配は、親がいなくなった時の事。だからこそ、息子くんが生きていくための環境をできるだけ具体的に考え、用意していくつもりです。
 

大変そう?でも…よく考えれば、私だって石野さんと同じように「娘が親の手を離れて生きていける」ことをゴールに日々子育てをしているはず。石野さんは、より強くそのことを意識しながら息子くんに向き合っているのですね。

 

息子くんのこれからを考える上で必要になってくる情報は「NPO法人調布心身障害児・者親の会」 の勉強会や、同じように障害のある子どもを持つ先輩ママ・パパたちから教わっているんだって。

 

「先輩たちが、それぞれのお子さんたちが小さかった頃の苦労を笑い話にしている姿を見て、少し気が楽になりました」

 

取材を終えて

 

周りのみんなと同じように生活することが難しい息子くんを持ち、ともすれば地域で孤立しがちな状況ですが、まるで家族のような仲間に囲まれて暮らしていました。でもそれは、自分の「弱み」をさらけ出せる信頼関係があったからですよね。

信頼関係を築くコツは、「少し勇気を出して本当の自分たちを見せてしまう事」だと石野さん。障害があってもなくても、子育ての考え方は実はそんなに違わない、ということも新たな発見でした。

執筆者 コサイトウ

コサイトウ

コサイトの中に住む、サイのコサイトウです。自然豊かで人もあったかい調布が大好き!このコラムを通して「ここで育てたい」と思う人が増えるといいな。

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