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いっしょに育て隊

第32回
調布市立中央図書館児童書担当  江原未菜子さん
「この本読んでみない?」と子どもたちへ(後編)

2016年9月2日 公開

調布市の図書館に就職して5年目という熱き司書、江原未菜子さん。インタビュー前編ではご自身が読み聞かせてもらった経験や、この仕事を目指すきっかけとなる図書室の先生との出会いにについてうかがいました。

 

コサイト 恩師の影響があっての現職ですが、具体的に調布市の図書館に就職しようと思ったきっかけは?

 

江原 就職活動をしていた頃、保育士をしていた3歳上の姉に「図書館で働きたい」と話したところ、姉が保育士の勉強をしているときに使っていたというテキストを手渡してくれました。そのテキストが、この調布市立図書館が発行している「このほんよんで!」という冊子だったのです!

 

コサイト なんと!調布の図書館が作った絵本リストの冊子ですよね。それが、テキストとして使われていたと?

 

 

江原 はい、今は第2版になっていますが姉が持っていたのは第1版でした。とても大事にしていて、仕事でも絵本選びの参考にしていたのだそうです。私自身が母に読み聞かせてもらって大好きだった「ねずみくんのチョッキ」(前編にエピソード掲載)も、もちろん載っていました!それでこの図書館は間違いないなと…(笑)。

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コサイト 江原さんの心に残っている絵本もちゃんと選んでくれているから…(笑)。それが調布市立図書館との出会いだったのですね。

 

江原 その時、たまたま採用試験をやっていて、もうこれしかないと思ってしまって(笑)。ご縁があるなと思ったら、あとは一直線でした!

 

コサイト すごーい!

 

職員が「いい本」を選び、リストに

 

コサイト 「このほんよんで!」と、小学生向けの「小学生にすすめる本」(いずれも有償で配布)で紹介している本は、いずれも調布市の図書館職員のみなさんが選び抜いたものだそうですね。

 

江原 はい、そして本の紹介文もすべて図書館の職員が書いています。調布市の図書館は、長年、子どもの本をきちんと「評価」するという作業を積み重ねてきていて、その蓄積がこのような冊子として形になりました。ご紹介した2冊は長年読み継がれている良書を厳選しています。それ以外に、毎年刊行される最新の本からおすすめのリストも各種作って、無料でお配りしているんですよ。

 

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コサイト 長い歴史があるのですね!でも…子どもに読ませる本は、「良書」を選ばなければいけないのでしょうか。

 

江原 いえいえ、そんなことはありません。いろんな本を読む中で、心に残る「良書」もあったらいいなと。たとえば、図書館が主催している「小学生読書会」では、毎月テーマを決めておすすめの本を紹介しています。そういう本を借りる子は、漫画も、ライトノベルのような軽い読み物も大好きで読んでいたりします。たくさん本を読む子はいろいろな本を読んでいます。私はそれでいいと感じています。

 

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コサイト 本が好きってそういうことなのでしょうね。ただ、幼児期は絵本をたくさん読んでいても、小学生になると急に本を読まなくなる子が増えるようです。

 

江原 絵がある絵本は読みやすいけれど、急に文字がいっぱいになるとそれだけで読むのが大変、ハードルが上がるのでしょう。低学年向けの「幼年読み物」の中には、全部のページに挿絵が入っているものもあります。短いお話がいくつか入っているものもおすすめです。ただ、それでも絵本から読み物への移行は難しいところがありますね。

 

思春期の若者と図書館

 

コサイト そしてさらに中学生になると…何を読んでいいのかわからなくなってきます。

 

江原 調布市立図書館では中学生にすすめる本のリストも作り、図書館に並べておいたりもしています。けれど実際に手に取ってくれる中学生は少ないですね。どうしても、読みやすいライトノベルなどにいきやすいのだと思います。

 

コサイト そうなんですか…。

 

江原 けれど、中学生や高校生になっても図書館に来てくれる子たちはいます。たとえば図書館の募集に応募した中学生の記者が手書きで作っている「ぶちねこ便」という小冊子は、創刊30周年を迎えました。部活動や受験で本当に忙しい中、そのような形で図書館に関わってくれるのは嬉しいことです。

 

コサイト そういう関係が続いていることが大事ですね。そして何を読んでいいかわからないときに、聞ける場所が図書館ということですね。

 

江原 はい、そうです!私は、「この本読んでみない?」ってさりげなくその子が読みたいと思える本を手渡してあげられたらいいなと思っています。

 

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コサイト すてきですね。このコラムは「いっしょに育て隊」というタイトルです。江原さんたち図書館職員の皆さんが、子どもたちを見守ってくださっているのですね。

 

江原 私はまだ頼りないと思いますけれどね。それに…実は私、子どもが苦手だったんです!

 

コサイト ええ〜?まさかの…!

 

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江原 何を考えているのかわからないし、なんだか怖くて苦手だと思っていたのです。でも、分館で働き始め、現場で子どもたちとふれあうようになってすごく変わりました。「こんなことで喜んでくれるんだ」「ちょっとしたことで笑ってくれた」と感じる経験をたくさんさせてもらって、今はもう可愛くてたまりません。

 

コサイト 大きく変わったのですね。

 

江原 本当に可愛くて大切な存在です。もちろん私は他人なんですけれど…でも子どもたちには悲しい思いをしてほしくない、辛い思いをしてほしくない…楽しい思いをしてほしいって思います。子どもたちにしてみたら、数年後に会ったとしても「あんた誰?」っていう存在なのでしょう。でも、私はそれでいいんです(笑)。

 

 

まっすぐな気持ちで子どもたちとのふれあいを楽しんでいる江原さん。職員のみなさんが、その日その日にいろいろな思いを込めて並べているという絵本コーナーも気になりますね。今日はどんな絵本が並んでいるかな? (撮影・赤石雅紀 取材・竹中裕子)

 

 

 

執筆者

江原未菜子(えはら みなこ)  大学卒業後調布市立図書館若葉分館を経て、現在は中央図書館児童書担当の司書として勤務。1歳の姪っ子さんが生まれたとき、「すぐに絵本をプレゼントしました」。

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