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いっしょに育て隊

第42回
子どもたちと映画寺子屋 浅野露子さん
映画の楽しみを伝えたい「映画寺子屋」(後編)

2017年6月24日 公開

2011 年の東日本大震災をきっかけに、調布で映画の普及活動を始めた浅野露子さん。インタビュー前編では、「母と子の映画寺子屋上映会」について詳しく伺いましたが、実はその活動は上映会だけにとどまりません。「みる」だけでなく「つくる」や「あそぶ」をテーマにしている「映画寺子屋」の魅力に迫ります。

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小学生のための映画寺子屋

 

コサイト 「映画で何かできないか」という思いから始まった「映画寺子屋」の活動ですが、今は調布市とも連携して活動していらっしゃいますよね。

 

浅野 最初に映画作りのワークショップを企画して、ロケ場所探しで調布市に問い合わせたのが始まりです。

 

コサイト 「『つくる』子どもたちの映画寺子屋」のことですね。

 

浅野 はい。これは小学生がプロの指導を受けて映画を作るワークショップで、プロの映画監督とその監督のブレーンスタッフにも来てもらいまして、カメラの操作から何から…一から教えてもらって作り上げていきます。

 

コサイト すごい!何日ぐらいかかるのでしょう。

 

浅野 5分から10分程度の作品を、脚本から撮影、編集、上映会まですべて子どもたちで作り上げる5日間のプログラムです。おかげさまで、市報で参加募集をかけるとすぐに応募がありますし、リピーターも多いんですよ。

 

コサイト リピートしたくなる魅力とは?

 

浅野 おそらく、学校も学年も違う子どもたち同士が一緒に映画作りをするところだと思います。そして何より関わる大人たちが、日頃接している学校や塾などの先生とは違う、ある意味フリーダムな(笑)。そんな大人たちと接するのも楽しいのではないでしょうか。高校生や大学生もスタッフとして参加していますし。

 

コサイト 小学生にとっては、かなり刺激的なメンバーですね!プロのご指導も本格的だとか。

 

浅野 たとえば、プロの撮影部さんの方が来て指導してくれるんですよ。カメラの取り扱い、三脚の立て方、声のかけ方など本当に全部教えてもらいます。カット割りも自分たちで考えているんですよ。まずは基本的なカットを教えてもらいます。たとえば人物撮影の場合はバストショットがこう、ミディアムショットはこう…といった感じです。実際に子どもたちが「ここはアップで」などと話し合いながらカット割りを決めて撮影を進めています。

 

コサイト 本格的ですね。

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浅野 撮影が終わったら、編集作業も子どもたちがやるんです。編集作業について習ったら、あとは自分たちで編集です。最近の子どもたちはパソコンに慣れている子が多くて、覚えも早いですよ。

 

コサイト 映像編集だけでなく音声も?

 

浅野 はい、もちろんです。音源選びからすべて子どもたちがやっています。フリー素材から選ぶこともありますし、ときには監督の知り合いの音楽家さんが使用料をディスカウントして提供してくださった音源から選ぶこともあります。

 

コサイト 何から何まで経験できるとは。

 

浅野 短編映画とはいえ、企画から上映まですべての行程を体験できるプログラムなので、とても充実していますよ。

 

コサイト 参加した子どもたちの様子はどんな感じなのでしょう?

 

浅野 参加初日と最終日では、どの子も表情がずいぶんと変わりますよ。やりきったという自信にもなるのでしょう。何より笑顔が違います。初めは不安だらけで参加した子も、最終日には誰よりも笑顔になっていたりして。

 

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大会場での上映会は満席に

 

コサイト もう一つ、「あそぶ」をテーマにしたイベントもやっていますよね。

 

浅野 これは不定期開催で、対象も小学生だったり幼児だったりといろいろです。主に映画の原理がわかるようなものづくりをしています。たとえばパラパラ漫画とか、フェナキストスコープ(※1)などですね。自分たちで絵を描いて、それぞれのコマに色を塗って、実際に動かして楽しんでもらっています。昨夏は映画の上映会に合わせてゾートロープ(※2)を作るイベントを実施しました。

 

コサイト 2017年2月に開催された上映会のことですね?

 

浅野 はい。調布市観光協会の主催で「ちょうふ親子映画上映会」の企画・運営をやらせてもらいました。上映したのは「11匹のねこ」と「11ぴきのねことあほうどり」という映画です。2日間の日程で調布市文化会館たづくりのくすのきホールで午前午後2回、合計4回の上映会でしたが、すべて満席だったんですよ!

 

コサイト すご〜い!

 

浅野 前年度の年末にも1回やっています。そのときは「パンダコパンダ」という作品でした。

 

コサイト おお、宮﨑駿さんの初期の名作ですね!

 

浅野 子どもたちに映画の楽しさ、映画館で見る楽しさを感じてもらいたいという一心で選びました。

 

コサイト 浅野さんの、映画の楽しさを伝えたいという情熱はとどまるところを知りませんね。そこまでやってしまう(笑)のはいったいなぜなのでしょう?

 

浅野 なぜ…?え〜と…。好きだから、ただそれだけですよ(笑)。

 

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浅野 映画館という「暗闇」で、知らない人たちと同じ時間を共有するという特別な体験をしてもらいたい。そして、親子で一つの作品について感じたことを話してもらう機会になったらいいなと。ご家庭でDVDを見るのとは違って、映画館に足を運んで映画を見るという「行為」を体験してほしいと思います。映画は非日常を体験することができます。自分が宇宙飛行士になったり、きれいなお姉さんになったり。そういうことができる映画って本当にすごいと思っているから…。

 

コサイト 確かに、映画を見るとすっかりその気になってしまいますよね。

 

浅野 そうなんです。私は高校生のとき、深作欣二監督のヤクザ映画を見て映画館を出て友だちと「深作監督すごいね〜」なんて話しながら…ふと気付いたら大股歩きだった、なんてこともありました。

 

コサイト あはは。疑似体験ができる楽しさですね。

 

浅野 映画を通して親子で過ごす時間を持ってもらえたら嬉しいし、何より子どもたちには映画を好きになってもらいたい、その一心です!

 

※1 フェナキストスコープ  軸に垂直に取り付けられた円盤に、アニメーションのコマを順に描いたもの。円盤を回転させると絵が動いて見える。

※2 ゾートロープ(回転のぞき絵) 円筒の側面にスリットがあり、回転させると円筒内面に順に描かれている静止画が動いて見える器具。

(撮影・赤石雅紀 取材・竹中裕子)

 

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執筆者

浅野露子(あさの・つゆこ) 調布市在住・1女の母。無類の映画好き。映画の魅力を知ってもらいたいという思いから、「子どもたちと映画寺子屋」を立ち上げ、さまざまな活動を通して映画の魅力を伝えている。

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