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いっしょに育て隊

第45回
児島秀樹さん(グッドモーニング仙川!プロジェクト代表)
仙川で「マンション養蜂」を始めた理由(前編)

2017年12月1日 公開

仙川駅から徒歩2分、通りに面したマンションの敷地内で、まさか養蜂をしているなんて思いもよらないかもしれません。

 

地域の美化活動がきっかけとなり2年前からマンション養蜂を始めた児島秀樹さん。「仙川みつばちプロジェクト」の仕掛け人です。子どもたちにもみつばちの素晴らしさを伝えたいと体験講座を企画。また、採蜜したはちみつを携えて、地域のイベントにも積極的に参加しています。コサイト編集部としては、ぜひとも養蜂の現場を見せていただきたいとお願いしてみました。

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コサイト マンションの緑化スペースで養蜂をしているのですよね。

 

児島 はい、こちらです。マンションのゴミ置き場倉庫の屋上なのですけれど…(と言いながらはしごをかけ、スイスイと登っていく)。

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▲倉庫屋上に、鬱蒼とした茂み。

 

コサイト 若干高いところが苦手なんですよね…(冷や汗をかきつつようやく登る)。わあ、けっこう草が生えていますね。

 

児島 まあ、蜜蜂はレンタルしているので、今の時期(11月)はもう、巣箱はないのですけれどね(笑)。

 

コサイト ですよね…ははは。

 

20000匹の西洋みつばち

 

児島 まあこんな感じでやっているという雰囲気だけでも感じてもらえたら(笑)。(置いてあるブロックを指差しつつ)ここに巣箱を設置します。4月から始めて、だいたい20000匹の西洋ミツバチを飼育します。うちのマンションでは建築時から庭がコンセプトのマンションで、当初はプロのガーデナーにメンテナンスを任せていました。しかし今はマンション住民による「緑化クラブ」も参加して一緒に管理しています。そこに巣箱を置き、仙川駅周辺などに蜜源となる花を植えたりしています。

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コサイト お隣は広いお庭のあるお宅ですね。でも…養蜂ともなるとご近所のみなさんのご理解がないと難しいのでは?

 

児島 もちろん、マンション住民にはまずはご理解をお願いしましたが、ご近所の皆さんにも丁寧に説明し、ご理解をいただいてからスタートしました。

 

コサイト 重要なプロセスですね。あ、あれは蜂が受粉してくれたお陰で実ったという、レモンの木でしょうか。

 

児島 そうです。たくさん実ったとこの家の方も喜んでくださいまして、レモンをいただきました。お返しに採れたはちみつをお分けしたんですよ。

 

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▲よく見るとレモンがたくさん!

 

そこへ、同じマンションに住み、活動をともにしている野村昭夫さんが「巣箱がこんな感じだって見てもらおうよ」とデジカメを持って登場。巣箱にはみつばちがびっしり…な様子などを、見せてくださいました。

 

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▲本格的に養蜂をしている様子が伝わってきます。1つの巣箱で20000匹ってすごい!

 

始まりは「雹かき」をしたあの日

 

コサイト そもそも養蜂を始める前段がありましたね。まずは仙川駅前のゴミ拾いを始めたそうですがそのきっかけとは…?

 

児島 2014年6月24日が「グッドモーニング仙川!プロジェクト」(GMS)のそもそもの始まりです。この日は仙川や三鷹など地域に大量の雹が降った日。たまたま早帰りをした僕はとりあえず「雹かき」をしました。これが自分にとっては初めての地域活動となりました。地域の人たちと声をかけあったり、お礼を言われたり。自分のような人間でも、地域の役に立つことができたと実感し、決して忘れられない日になりました。

 

コサイト その後「ごみ拾い」へと?

 

児島 雹はめったに降りませんので(笑)、でもあんな感じで何か自分でもできることはないかと思ったときに、マンションの敷地内通路を出たところにいつも落ちているゴミを拾ったのが始まりです。そこから少しずつエリアが広がり、駅前の美化活動へとつながりました。

 

コサイト しかし、そこからなぜ養蜂を…?

 

児島 ゴミを拾っているうちに、街に花がないことに気づいて、周りの人達にも声をかけて公園や駅前に花を植え始めたのですが、その花にみつばちがやって来るのを見て「花を増やして、みつばちを飼い、みんなではちみつを食べることができたら楽しいよね。そんな街に住みたい!」と思いついたのです。

 

 コサイト 思いついても、なかなか実行できるものでもなさそうですが。何が児島さんを動かしたのでしょう。

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児島 今では仙川に暮らして12年になりますが、活動を始めるまではずっと「家・会社・駅・コンビニ」を行き来するだけの日々でした。つまり、それしか街を知らないということです。自分の住む街で何かしたくてもできることは何もない。そんなモヤモヤが、ついに限界に達していました。

 

コサイト 「できることは何もない」状況から、どう突破口を見出したのでしょう。

 

児島 地域に目を向けてみても「地域って何だよ!」って自分でつっこむぐらい何も知らないわけで。当然、街には知り合いもいません、みんな他人です。でも、マンション周辺に落ちているゴミを拾うことならできるかもしれないと。ゴミ拾いはいいですよ〜。誰も反対しないし、コストも掛かりません。ノーリスクな地域活動なんです。感謝されても怒られることはまずありません。

 

コサイト おっしゃるとおりですね。

 

児島 この体験が僕にはとても心地よかった。自分の価値観・ペースでできる活動だからです。やり始めると日々新たな街の発見があり、それが楽しく止められなくなりました。そして、僕に合っていると思いました。それまではずっと、悩んであれこれ考えて何もしないという人生だったけれど、ゴミ拾いなら何も考えずにできる。無心で目の前のゴミを拾うだけ。達成感もあるし、街の役に立っているという実感を持つことができたのです。

 

コサイト ずっと悩まれてきた?

 

児島 実は、僕には「吃音症」があり、幼少期からずっと悩まされ辛い思いをしてきました。とにかくそれを乗り越えたくて、様々な努力をしてきましたが、それでも克服できるものではありませんでした。

 

コサイト それが「ゴミ拾い」から変わったのですね。

 

児島 そうなんです。平日は早朝に、週末は明るくなってから街のゴミ拾いを続けました。すると、やればやるほど街に知り合いが増え、毎日がワクワク、楽しくなってきたのです。結果として、吃音なんてどうでもよくなってしまいました。

 

子どもたちにも伝えたい

 

コサイト 緑化、養蜂へと突き進んだ3年間。最近は仙川だけでなく、調布駅周辺でのイベントにも積極的に出店したり、地域で活動している人たちとも関わりをお持ちです。

 

児島 このあたりの町内会、地区協議会などにも顔を出していますし、調布市の「えんがわファンド」に助成金をいただいているので、先日は「ちょうふチャリティウォーク」にも出店しました。深大寺や調布駅界隈でもいつか養蜂ができたらいいなと思い、いろいろな人達とつながり、話をしているところです。また、養蜂を通じて若者支援にもつなげていきたいと思い、青少年の支援をしているNPO法人Kiitosさんとも話をさせて頂いています。

 

コサイト 「子ども」や「若者」も活動のテーマですよね。

 

児島 僕自身、みつばちの懸命に生きる姿に元気と勇気をもらい、変わるきっかけをもらいました。子どもや若者たちにも、みつばちの命を感じ、養蜂の面白さやそこから生まれる暮らしの豊かさを体験してほしいと思っています。

 

コサイト みつばちのために、花を植える活動も子どもたちと一緒に、ですね!

 

児島 花のある街、みつばちが蜜を集めに飛び交うほど豊かな街に暮らせたら、きっと嬉しいでしょう。子どもたちには自分たちが暮らす街を好きになってもらいたいと思います。そのためにも、まずは私たち大人が街を好きになることが大事だと思っているのです。

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何かやりたいけれど、何もできない…サラリーマンとして地域とどう関わっていいかさえわからなかったという児島さんが、たった3年で「マンション養蜂」にたどり着いた経緯だけでもおもしろすぎますが、インタビュー後編では、具体的に子どもたちとの関わりや、マンション養蜂の魅力にぐぐっと迫ります。

(撮影・赤石雅紀 文・竹中裕子)

 

執筆者

児島秀樹(こじま・ひでき) グッドモーニング仙川!プロジェクト代表。仙川在住歴12年。サラリーマン生活の傍ら、3年前の2014年に「グッドモーニング仙川!プロジェクト」を始動。仙川駅前のゴミ拾いや緑化活動のほか、マンション養蜂を始めて2年。平日は会社勤め、週末は地域活動を行っている。高校生と中学生の男の子のお父さん。 グッドモーニング仙川!プロジェクト ホームページ https://gmsengawa.com/

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