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いっしょに育て隊

第41回
子どもたちと映画寺子屋 浅野露子さん
映画の楽しみを伝えたい「映画寺子屋」(前編)

2017年6月16日 公開

今も映画の撮影所や関連会社が点在し、日本映画全盛期の昭和30年代は「東洋のハリウッド」とまで称された調布市。調布市も映画関連のイベントを企画したり、ドラマや映画のロケ地としても数多く登場しています。

 

そんな様々な取り組みの中、「母と子の映画寺子屋上映会」というイベントが行われているのをご存知でしょうか。

 

調布市文化会館たづくり12階大会議室内に赤と白のテントをたて、大きなスクリーンに映写機で16ミリフィルムの映画を上映しています。乳幼児の子どもとママたちが靴を脱いでゆったりと映画を楽しんだ後は、スタッフもまじえて軽食をいただきながら楽しいおしゃべりもしています。

 

2015年5月からほぼ隔月で開催されてこの5月で13回目。なぜフィルム?なぜ母と子?テントって?そもそも映画寺子屋とは…?企画運営を担当している、浅野露子さんにお話を伺いました。

 

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貴重なフィルムは「宝の山」

 

コサイト 実は私、先日(2017年5月13日)の上映会を見学させていただきました。子ども向けの映画上映会というので、どんなものかと出かけましたら、昔懐かしい16ミリフィルムの映画を映写機を回して上映されていたので驚きました。そこで上映しているフィルムは調布市が保管しているものから選んでいるとのことでしたので、今日は特別にご許可をいただき、フィルムを保管しているライブラリーに入れていただきました!

 

浅野 実はこの部屋に入れていただくのは初めてなんですよ!日頃はフィルムのリストから上映する映画を選んでいるだけなので…。

 

コサイト ええっ!?そうだったのですね!

 

浅野 まさか今日ここに入ることができるなんて…本当に嬉しいです。そして、このフィルムは、私にとっては宝の山です!

 

コサイト ひゃ〜、そんな宝の山から選び抜かれた映画が「母と子の映画寺子屋上映会」で上映されているのですね。ということは、毎回必ず16ミリフィルムを上映されているということでしょうか。

 

浅野 はい、そうです。子どもたちに映画の原理的な部分に触れてもらいたいという思いでやっています。

 

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▲テスト用の16ミリフィルムを見せていただきました。カウントの番号が確認できますね。

 

コサイト 映写機の回る音が、アナログでいい感じなのですよね〜。

 

浅野 子どもたちも映写機に興味を示してくれるので、すごく嬉しいです。参加してくださるお母さんの中には、フィルム映画を楽しみに来てくださる方もいらっしゃいます。「初めて子どもに見せる映画はフィルムがいい」とおっしゃる方も。

 

コサイト 上映される映画は古いものがほとんどですね。今の子どもたちが「古い」映画を楽しめるのかな、と思っていたんです。ところが実際に先日された映画は、古いとはいえ心に響くというか、味わい深いというか。

 

浅野 作品選定はすごく気を使っているんですよ(笑)。また、上映会では「絵本になっている作品」を選ぶことに決めています。

 

コサイト 目利きの浅野さんが選んだ、価値あるフィルムなのですね。

 

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▲上映会では、実際に浅野さんが映写機を回します。

 

飛び込んだ映画の世界

 

コサイト 浅野さんご自身は映画関係のお仕事もされていたとのことですが、そもそも映画が好きになったきっかけは?

 

浅野 子どもの頃は、映画好きだった父親に連れられてよく映画を見に行っていました。高校に入ってからは、学校の近くにある小さな映画館に学校をサボっては出かけていたんです(笑)。昔のモノクロの映画など、日本のものも外国のものも、とにかくかなりの本数を見たと思います。

 

コサイト 映画好きが昂じて映画業界に?

 

浅野 そういうことですね。生まれ育ったのは山形なのですが、ちょうど高校の頃に「山形国際ドキュメンタリー映画祭」が開催されまして、その立ち上げのときにボランティアで参加したのがこの世界に関わった最初です。そこで知り合った映画監督がドキュメンタリー映画を撮ることになったときに誘われまして。高校卒業後に映画の世界に入りました。

 

コサイト 憧れの世界に飛び込んだのですね。

 

浅野 そうなりますね。その後しばらくは映画やテレビの制作関係で、助監督や演出助手の仕事をフリーランスでやっていました。結婚して子どもが生まれたことをきっかけに、仕事からは離れることになりましたけれど。

 

コサイト 子育てをしながらも、映画は見ていらしたのですか?

 

浅野 子どもと一緒にたくさん見ました。日本のアニメーションにはすごくいい作品があるので、京橋の東京国立近代美術館フィルムセンターなどで夏休みに行われていた子ども映画特集のようなイベントにはせっせと参加していました。映画寺子屋の上映会では、この頃の経験も活かされているんです。

 

コサイト 親子で映画にどっぷりだったのですね。しかもその経験を元に、今は子育て中の親子のための映画上映会という形でお母さんたちの支援もされている。

 

浅野 支援っていうか…(笑)一緒に遊んでもらっている感じですよ。

 

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母子が地域とつながる映画上映会

 

コサイト それにしても、なぜ子どものための映画上映会をやろうと思ったのでしょう。きっかけは?

 

浅野 2011年の東日本大震災です。出身が山形なのでその隣の県ではたくさんの方が被災しました。私の親戚や知人も亡くなっています。中には子育て中の人もいて…私自身とてもショックな出来事でした。その後被災地のボランティアなどにも参加して、そこで子どもたちのために何かできることはないかと考えた結果…。

 

コサイト それが映画だったと。

 

浅野 はい。私自身、成長過程で映画が友だちみたいなところがありました。子どもたちにとって、映画が少しでも身近になってくれたらと考えたのです。

 

コサイト 調布は直接の被災地ということではありませんけれど、子どもたちにとって少しでも映画が身近になり、好きになってもらえたら…活動の原点はそういうところにあるのですね。

 

浅野 「母と子の映画寺子屋上映会」では、子どもはもちろんお母さんたちにも楽しんでもらいたいと思っています。親子が一緒に見てもらえるという部分もこの上映会で大切にしているところです。ですからお母さんたちに「よかった」と言われると心の中で「やった」と。

 

コサイト ガッツポーズしちゃう(笑)!

 

浅野 「ビデオ屋さんでは見られないような映画を上映してくださってありがとう」と言われたりすると、もう本当に嬉しくて。

 

コサイト それに、映画寺子屋の上映会親子で特別な時間を一緒に過ごせる特別な時間ですもの。選び抜かれた作品を、映写機でフィルムを回して…そういえば上映会ではテントを張ってますけれど、なぜなのでしょう?

 

浅野 映画は見世物小屋から始まった文化です。そんな雰囲気もお伝えしたいと思って毎回テントを張っています。調布市のものを借りていまして、毎回、市の職員の方がテントを設営してくださっています。

 

コサイト 調布市お墨付きのイベントですから、きっと、担当課のみなさんも力が入っていることでしょう。

 

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浅野 いろいろ協力していただいています!それから毎回、地域のお店で調達した「軽食」もお出ししています。地域の美味しいお店を知ってもらういい機会ですから。いっしょに食べながら自己紹介したり、映画の感想を伺ったりする中でお友だちになってもらえたらと思っています。地方から引っ越してきたばかりで知り合いがいないという方も、この上映会で仲良くなったお友だちといつも連れ立って、ずっと皆勤賞で参加してくれて…。美味しいお店も私に教えてくれるぐらい地域に馴染んでいる姿を見ると、すごく嬉しいです。

 

コサイト 乳幼児の親子が気楽に参加できて、友だちもできて、映画も楽しめて、地域の良さを知ることまでできる上映会なんて、本当に貴重です。調布の美味しいお店の情報を知ることもできるし…調布っていい町だなって思ってもらえそうですね。

 

 

映画が好き過ぎる浅野さん。実は上映会だけでなく、小学生向けの映画を「つくる」ワークショップや、幼児から小学生までを対象とした、映画の原理を楽しく知ることができる「遊び」のワークショップも開催しています。こちらも感動のストーリーが…!詳しくはインタビュー後編をお楽しみに。(写真・赤石雅紀 取材・竹中裕子)

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執筆者

浅野露子(あさの・つゆこ) 調布市在住・1女の母。無類の映画好き。映画の魅力を知ってもらいたいという思いから、「子どもたちと映画寺子屋」を立ち上げ、さまざまな活動を通して映画の魅力を伝えている。

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