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いっしょに育て隊

第5回
中川平一(なかがわ へいいち)・黒木ユタカ(くろき ゆたか)
先生に出会ったから、今の僕がいる(前編)

2015年6月5日 公開

調布の街を描いて50年、市内の小学校教諭として勤める傍ら、街の絵を描き続けてきた画家の中川平一さん。そして、中川さんの上ノ原小学校時代の教え子であり、気鋭のイラストレーターとして活躍中の黒木ユタカさん。 今回の「いっしょに育て隊」は、調布に暮らし続け、それぞれのアプローチで調布の街を描いているお二人の師弟対談です。中川先生のご自宅におじゃましました。

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コサイト 黒木さんは中川先生の図工の授業を受けていたそうですね。

 

黒木 そうなんです。今日は先生にお目にかかるということで、実家で子どもの頃の絵を探してきました。先生の判が押してあるものは少なくてこれだけなんですが…。

 

中川 よく取っておいてくれたねえ!うれしいよ。

 

黒木 この絵は、確か小学校の校庭にある木を描いたんですよね?

 

中川 そうそう、校庭だよ。上ノ原小学校には、絵になるような木がたくさん生えていてね。いや、それにしてもよく取っておいてくれたね。

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黒木 それから先生、この絵は覚えていらっしゃいますか?調布市の風景を切り絵で表現するという授業でした。家の近くにあった高速道路のバス停から見える景色です。この作品を作るために、ロケに行ったことが記憶に残っています。

 

中川 すばらしい作品だね、6年生で遠近法を使いこなし、こんなに見事に仕上げていたのだから。

 

黒木 はい、6年生でした。

 

中川 こっちの木の絵は、なんだか僕の絵にも似ているなあ(笑)

 

黒木 僕、先生にはかなり影響を受けていると思います。

 

コサイト 黒木さんは小学校のころから、中川先生の絵を見る機会があったのですか?

 

黒木 たぶん5年生ぐらいだったと思うのですが、授業の後に「個展をやるから」と先生から案内状をいただいたんです。調布駅の近く…ラーメン屋さんのそばの小さいギャラリーだったと思います。まだ小学生だったので、母親に連れていってもらいました。_MG_4660

 

「コサイトで街の絵を描きました」「黒木君の世界だね」

 

コサイト 黒木さんは、コサイトのページに一番下の部分にある街の絵を描いていただきました。

 

黒木 はい、今日はその絵も持ってきました。原画は持って来られなかったのでコピーなのですが…。(と絵を広げる)

 

コサイト この絵は本当に素晴らしくて、コサイトの宝だと思っています。調布の街のコンテンツはしっかり盛り込まれているんです。深大寺があって、植物園も、飛行場も、畑も川も…。デフォルメされていますが、間違いなく私たちの街なんです!(つい熱が入る編集部員)

 

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中川 (しみじみ眺めながら)本当だね、ちゃんと描いてある。うん、黒木君の場合は、僕が教えたことも少しは影響しているかもしれないけれど、全部持って生まれた感性であり、才能なんだよね。そしてこういう教え子に出会えることが、教師にとって何よりの財産です。

 

コサイト 中川先生の影響を受けたとおっしゃっていましたが、この絵は黒木さんならではの作品にも思えます。

 

中川 もちろんそうだね。僕の作品には写実的な世界が、黒木君の作品には簡潔で親しみやすい世界が表現されている。そして次の世代が黒木君の作品をヒントに、また育っていくのだろうね。

 

コサイト 黒木さんの息子さんは小学1年生だそうですが、やはり絵が好きでよく描いていらっしゃるんですよね。

 

黒木 はい、いろいろ描いていますよ!

 

中川 それが教育の連鎖なのです。親は子どもにあれこれ言うよりも、自分の背中を見せることが大事だと思います。親がどのような生き方をしているかということです。黒木君の息子さんも、きっとお父さんが真剣に絵を描いている姿を見ているんだろうね。そういう経験を重ねる中で、子どもなりの感覚が生まれてくる…言葉ではうまく表現できないなあ、とにかく、つながっていくんですよ。

 

黒木 息子は僕を見て「楽しそうにやっているな」と思っているみたいです(笑)。

 

中川 それは、親が「教えた」ことじゃないよね。

 

寝転がって写生をした黒木少年と中川先生

 

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コサイト 黒木さんにとって、中川先生はどんな先生だったのでしょうか。

 

黒木 先生には、よく褒めてもらいました。それが本当に嬉しかったですね。

 

コサイト たとえばどのようなことを褒めてくださったのですか。

 

黒木 小学校では年に2回ほど写生大会がありました。かに山(深大寺自然広場)と自由広場(総合体育館の隣)だったと思います。かに山で写生したときのこと、僕は地面に寝転がって仰ぎ見た木の枝を描いていました。内心では先生に「ふざけている」と叱られるのではないかとビクビクしていたんです。そこへ中川先生がやってきて「そういうものの見方は素晴しいね」って、すごく褒めてくださったんです。

 

中川 言ったかもしれないね(笑)。

 

コサイト 私だったら叱ってしまいそうです…!

 

中川 寝転がって描きたいと思うのもまた個性だから、叱らないですよ。せっかくそうやって描いているのだから。それにね、そんな目線で描こうという着想は、普通は気付かないです。黒木君だからできたことなんです。

 

黒木 そういうことがあったから、さらに絵が好きになったのだと思います。

 

 

久しぶりに再会したお二人の話はつきません。というわけで、後編へ続きます

執筆者

左:中川平一(なかがわ・へいいち)1939年新宿区生まれ、1945年に調布市に転居して以来ずっと調布市在住。東京学芸大学美術科卒業。市内の小学校で教員となる。教員の傍ら街の絵を描き続けて50年。 右:黒木ユタカ(くろき・ゆたか)1976年調布市生まれ。イラストレーター・映像監督。デザイン学校在学中から始めた音楽活動の傍ら、CDジャケットやミュージックビデオの制作を手がける。2009年に独立。二児の父。

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