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いっしょに育て隊

第18回
調布市せんがわ劇場 吉池耕一郎さん・萩原景子さん
子どもも大人も楽しめる「まちの劇場」(後編)

2015年12月11日 公開

地域の劇場として親しまれている、調布市せんがわ劇場。インタビュー前編では、子ども向けに作るのではなく「子どもも大人も楽しめる」ものを創っているというお話をうかがいました。

 

そしていよいよ、せんがわ劇場が開館当初から続けているという、「サンデー・マティネ・コンサート」のお話に。今回は主に萩原さんに聞きました。

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年齢制限を設けない理由

 

コサイト 「サンデー・マティネ・コンサート」には赤ちゃん連れでも参加できるそうですね?

 

萩原 はい、そうです。年齢制限はありません。

 

コサイト 日曜日の午前中に、しかも無料です。

 

萩原 「サンデー・マティネ・コンサート」は、「ジャンルにとらわれず上質な音楽」を「年齢に関わらず幅広いお客様」にお贈りすることを目指したコンサート、というコンセプトをずっとうたい続けています。企画の意図としては、日曜日の午前中にチケットを持たずにふらっと劇場に出かけていい音楽を聴き、その後にできれば仙川のまちに出て買物やお食事を楽しみ豊かな休日を過ごしていただきたいなと。そんなきっかけになるような演奏会でありたいと思っています。

_MG_4951▲劇場を出てからゆったり散歩も楽しめる環境です。

 

コサイト プログラムを拝見すると、演奏は本格的なもののようですね。

 

萩原 近くにある桐朋学園大学ゆかりの音楽家の方たちが、この「サンデー・マティネ・コンサート」で演奏してくださることも多く、力のある演奏家の方たちが協力してくださっています。これまでに出演してくださった方たちの中には、海外で活躍していたり、有名オーケストラのコンサートマスターだったり。それだけに、お客様からは「こんな素晴しいコンサートなのだから、小さい子どもは連れてこないほうがいいのではないか」というご意見もいただいています。

 

コサイト それでも、年齢制限は設けないまま続けていらっしゃいます。

 

萩原 1時間のコンサートを聴けるかどうかは、個人差があると考えています。幼児でも静かに楽しんで聴ける子もいれば、あまり関心が持てない子もいるでしょう。大人でもそうです。そんなことから、音楽を楽しむことにおいて年齢で区切るのはやめようという方針を貫いているんです。出演してくださる音楽家の方たちも、この方針には賛同してくださっています。

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親子で利用するからこそマナーも大事

 

コサイト それでもやはり、ぐずってしまう赤ちゃんもいると思います。そんなときはどうしているのでしょう?

 

萩原 たとえば、少しロビーのほうで休憩していただくようお伝えしています。

 

コサイト 周囲の方への配慮は必要ですものね。

 

萩原 劇場に集う方たちは、素敵な音楽を聴く、空間を作る仲間だと思うのです。すばらしい演奏や演技を観客が存分に感じ、楽しいよ、面白いよ、という気持ちをステージに戻すことで、演奏者、演技者はもっといいものをと。そんな相乗効果が、生のパフォーミング・アートにおける最大の良さだと思います。

だからこそ、その二度とない空気感を乱してしまいそうなときは、少し引いていただくこともまた大切です。

 

コサイト そういうマナーも伝えていきたいと?

 

萩原 素晴らしいステージに出逢うためには、お客様の側でもそれぞれ思いやりや気づかいを分担する、という気持ちになっていただければありがたいです。自分が楽しめることはとても大切、でも隣の人も同じように楽しめているかどうか。ただ、そういった感覚を持つには、むしろ怖がらずに劇場にたくさん来ていただいた方がいいと思うんですよ。

 

コサイト せんがわ劇場には、親子で演奏会でのマナーなどを学ぶ企画もあるそうですね。

 

萩原 「ファミリー音楽プログラム」の中で、「子どものための演奏会入門」という企画を年に1回ほど行っています。演奏会ってどうやって行くのか、始まる前のムード、演奏会ではどんなタイミングで拍手をするのかといったことを、実際に体験していただけます。

 

文化への入り口となる劇場を目指して

 

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コサイト せんがわ劇場では、次世代を担うアーティストの育成にも力を入れているとのことですね。

 

萩原 若い表現者の方たちを支援したいと、ピアノオーディションや、演劇コンクールなどを実施しています。コンクールに参加した方たちがせんがわ劇場の企画に加わってくれるようにもなりました。12月に上演する「オズのまほうつかい」の演出家もそんな関わりのある方の一人です。

 

コサイト つながっていくんですね!

 

萩原 それから、地域の小中学校へのアウトリーチ事業の中で、講師をお願いすることもあります。演劇のアウトリーチでは、子どもたちが劇をする時の演技指導として伺うこともありますし、俳優が演技を学ぶ手法を応用して、楽しみながらコミュニケーション力や発想力を伸ばすプログラムを提供したりしています。調布の子どもたちも「本物」に触れることで、きっと受け取るものがあるはずです。

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コサイト では最後にひとことお願いします。

 

吉池 私は劇場運営の専門家というわけではありません。しかしここまでいろいろな企画運営に関わるうちに、一度はわが子を連れて来たいと思うようになりました。あ、まだ2歳なのですけれど。子どもにも聴かせたい、見せたいと思えるようなものを、これからも提供していけたらと思っています。

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萩原 私には「野望」が3つあります(笑)。もちろんまちの誇りとなる劇場を目指しているのですが、その前にまず「まちに存在が許されている劇場」でありたいです。価値観は人それぞれで、劇場になじみのない方もいらっしゃると思うのですが、たとえば「子どもが楽しんでいるし、まあ劇場はあってもいいよね」と言ってもらえたら嬉しいです。

 

二つ目は、せんがわ劇場も週末の行き先の1つに入れてもらいたいということです。「そういえばせんがわ劇場で何かやってたね」と思い出してもらえたら嬉しいです。

 

三つ目は、表現をする人、それを見る人たちの入り口でありたいということです。ちょっと都心に出れば一流の演奏や芝居を見ることはできますけれど、最初から高額なチケットを買うのは、特にお子さんと一緒だと勇気がいると思います。幸い、ここは調布市の運営でもありますので、チケットは手頃な価格に設定することができています。せんがわ劇場を入り口に、もっと演劇や音楽に関心を広げていていただけたらいいなと思います。

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もうすぐクリスマス。せんがわ劇場では「親と子のクリスマス・メルヘン」として「オズのまほうつかい」が上演されます。

毎年このクリスマスの企画では終演後にサンタクロースが登場!小学生以下の子どもたちにプレゼントを渡しています(実際には保護者の方にプレゼントを用意してもらって、それをサンタクロースから渡してもらいます。もちろんもらえない子が出ないようにと、劇場でも準備しています)。今年のクリスマス、お子さんへのサプライズにいかが?

(取材・編集部 撮影・赤石雅紀) 

 

執筆者

写真右:吉池耕一郎(よしいけ・こういちろう)さん 調布市職員としてせんがわ劇場に勤務。2歳のお子さんのパパ。 写真左:萩原景子(はぎわら・けいこ)さん 調布市せんがわ劇場の広報担当。熱烈なFC東京ファン。

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