助産師といえば、産院や病院で出産前後にお世話になるプロフェッショナルな人たちという印象です。ところが調布の助産師さんたちは活動の場を地域に作り、毎月のサロンをはじめ昨年12月25日には「マザーリングフェスタ」を開催するなど、精力的に活動しています。
その名も「ゲゲゲの町の助産師会(調布市助産師会)」。いったいどんな人たちなのか、気になっている方も多いのでは?
今回はゲゲゲの町の助産師会が「助産師サロン」というイベントで利用することが多いという、調布市文化会館たづくりにある和室でインタビュー。代表の田中佳子さんとメンバーの棚木めぐみさん(マザリーズ助産院)にお話をうかがいました。
地域と病院をつなぎたい
コサイト 今日はお集りいただきありがとうございます。「ゲゲゲの町の助産師会」とは、調布ならではのネーミングですね。
田中 水木プロさんにも、快くご了承いただきました。
コサイト Tシャツ、お揃いなんですね。
田中 MWは「midwife」の頭文字。助産婦(助産師)という意味です。文字通り産婦さんを助けるという意味があります。私たちは、常にママたちに寄り添う気持ちで活動しています。
コサイト ゲゲゲの町の助産師会は任意団体としてのご活動とのことですが、いつごろから活動が活発になってきたのでしょうか。
田中 本格的に活動を始めたのは3年ほど前からです。実は大学病院の常勤として働いていたころから、地域と病院をつなぎたいと思っていたんです。
コサイト 地域と病院…現状では何がどう「つながっていない」のですか?
棚木 病院で出産すると、入院中はしっかりとケアしてもらえますが退院したとたんに、その関係は途絶えてしまいます。産後といえば、子育てに慣れないこともあって心身ともに疲れきっている時期ですよね。だからこそ、助産師が地域に出て産婦さんとつながり、サポートをすることが大事だと考えているんです。
田中 産後も病院と継続的につながって母乳ケアを受けている方はいますが、一部にすぎません。産後しばらく外にも出られないので、孤立感を深めてしまうことが多いのです。
出産後のママを孤立させないために
コサイト 助産師さんたちは病院の中にいることが多く、地域の実情に触れる機会も少ないのでは?
田中 私自身も核家族ですので、子育てでは苦労しています。調布市の「こんにちは赤ちゃん訪問」(新生児訪問)も担当しているのですが、そこで産後すぐ孤立し、不安になっているママたちと接する機会もありますし…。
コサイト 相談する先も見つからず、不安を抱えているママたちはたくさんいると思います。
田中 現状の仕組みではそういうママたちに、助産師が関わる機会がありません。ならばその機会や場を自分たちで作ってしまおうと思ったのです。助産師が地域でできることは何なのか、何人かで集まって熱く語り合ったのが懐かしいな(笑)。
棚木 そうそう、仙川のイタリアンレストランで飲みながら。
コサイト 飲みながら…(笑)。いいですね!
田中 未来を熱く語り、結束して「ゲゲゲの町の助産師会」として活動が広げていこうと。
棚木 私たちは、田中さんの「つながりたい」という想いに感染してしまったんです(笑)。
コサイト 感染ですか(笑)。すごい影響力なんでしょうね。
棚木 田中さんが助産師会の活動に加わってくれたおかげで、いっきにつながりができました。現在、23人もの助産師たちが集っています。若い病院勤務の助産師も地域に関心を持ち、一緒に活動してくれているのが嬉しいですね。
コサイト イベントには、たくさんのママが参加しているそうですね。
田中 毎月1回開催している「助産師サロン」には、いつも20組以上の方たちが参加して、とても盛り上がっています。テーマはヨガやベビーマッサージなど、ママも赤ちゃんも楽しめるものをと工夫しているんですよ。
棚木 助産師は本来、お産と赤ちゃんの世話だけでなく、思春期、妊娠、出産、産後から更年期まで、女性の一生涯にわたる健康をサポートすることもできます。昔は村に一人は産婆さんがいて、お産だけでなく村の女性たちの健康も守ってくれていたそうです。いわば、産婆さんの家は村の保健室的な存在だったそうですよ。私たちも地域で、そんな存在になれたらいいなと。
コサイト 調布には地域のママたちに寄り添う助産師さんたちがこんなにいる、と思うと本当に心強いです!
▲助産師会で作った缶バッジ。書かれている文字に注目!
助産師というプロフェッショナルなメンバーが集うことで、可能性はどんどん広がりそうですね。
次回は、お二人以外のみなさんにもお話をうかがっています。あらためて人材の豊かさにびっくりですよ。どうぞご期待ください。
右:田中佳子(たなか・よしこ)調布市助産師会の代表として活動の傍ら、病院勤務(非常勤)、母乳ケア出張、学校での「性の健康教育」出張講座、調布市「こんにちは赤ちゃん訪問」なども精力的にこなす。二児の母。左:棚木めぐみ(たなき・めぐみ)2006年、深大寺にマザリーズ助産院を開院。定期的に行っている「ちょうふおっぱいの会」では、産後ママたちの悩みや心配事の相談にのっていて、絶大な信頼を得ている。一児の母。