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いっしょに育て隊

第21回
東京都調布市立第五中学校 校長・田代和正さん 音楽科指導教諭・山崎朋子さん
思春期だからこそ——感性・体力を大事に育てる(前編)

2016年2月5日 公開

調布市立第五中学校は、調布市内で西側に位置する公立中学校です。南には多摩川が流れるのどかな住宅街の一角。たとえば近隣の保育園はここをお散歩コースにするなど、開かれた学校として地域に親しまれています。お散歩にやってくる保育園児に「かわいい」と喜び、手を振る中学生の子どもたち。

そんな調布市立第五中学校(以下五中)の校長・田代和正さんと、合唱の指導に力を入れている音楽科の山崎朋子さんにお話をうかがいました。

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▲落ち着いたたたずまい。うかがった日は冷たいみぞれまじりの雨が降っていました。

 

合唱部が年末のNHK紅白歌合戦に出演!

 

コサイト 田代先生、五中は2回目だそうですね。

 

田代 そうなんです、五中に戻って参りました!(ガッツポーズ)

 

コサイト (勢いにつられて)わあ、お帰りなさ〜い! …ノリがいいですね(笑)。

 

田代 五中では教頭として4年ほどおりました。その後調布市立神代中学校(以下神代中)で1年8カ月。校長としてあきる野市で3年勤めた後、小笠原諸島の村立母島小中学校へ赴任しました。

 

コサイト その後、調布市立第七中学校を経て、2014年4月から再び五中というわけですね。ぐる〜っと長旅の末、古巣へ戻ったような感じでしょうか。

 

田代 長旅でした(笑)。

0112_049▲専門は保健体育科。15年ほど前は五中の野球部顧問でした。

 

コサイト 山崎先生は、五中は初めてとのことですが。

 

山崎 はい。でも調布は長いんですよ。神代中で12年、七中で5年、今年度から五中です。

 

コサイト 山崎先生の合唱指導が素晴しいという噂は、コサイト編集部にも聞こえてきています。そして昨年末はなんとNHK紅白歌合戦に五中七中合同合唱部が出演していて驚きました。しかも大人気グループ「SEKAI NO OWARI」のバックだなんてすごいです。セカオワですもの。

 

山崎 ありがとうございます。

 

コサイト 部員のみなさんが生き生きと歌っている姿が印象的でした。でも…五中と七中の「合同」合唱部とは珍しいですね。

 

 

山崎 前任校の七中に合唱部を残して五中に行くことになり、そのときに「五中と七中の合同合唱部を作って、一緒にNHK合唱コンクールの東京都大会に出よう」と、部員たちと約束した経緯があります。五中のほうはというと、合唱部は6人ほど。とても控えめな子どもたちでしたが、「今年は七中と一緒に、都大会目指して頑張らない?」と誘ったら「目指したい」ということになり、七中との合同合唱部としての活動を夏休みから開始したのです。

 

0112_303▲話題が合唱のことになると、いっそう熱が入ります。

 

 

コサイト その結果は?

 

山崎 地区大会で金賞をいただき、都大会に出場することができました。都大会で賞は取れませんでしたが。

 

 

コサイト さすがです。とはいえ、そこからどうやって紅白に…?都大会で賞を取ったという理由がないのであれば、やはり…あの…山崎先生の強力なプッシュがあっての出演ということなのでしょうか?

 

山崎 いえいえ、違いますよ〜(笑)。

 

田代 ははは、違いますね。

 

山崎 都大会の出場順を決めるくじ引きで、部長が1番を引き当てたことがすべての始まりです。1番目の学校は、カメラテストなどのリハーサルにかり出されます。歌ったり、授賞式の動きの確認をしたり。その様子を見ていたNHKの担当者が「雰囲気がとてもいい」「動きや身のこなしがいい」「歌っているときのパフォーマンスがすばらしい」と高く評価してくださって、紅白出場のオファーにつながりました。

 

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「ノリのよい元気な生徒」という伝統

 

コサイト 五中の合唱部メンバーも、どんどん増えているそうですね。

 

山崎 今では30人ほどの大所帯になりました。

 

田代 なにしろ、エネルギッシュなんですよ。

 

コサイト 学校でも合唱コンクールがありますね。今年度の合唱コンはいかがでしたか?

 

田代 すばらしかったね。

 

山崎 うふふ、とくに先生たちの合唱が良くて。盛り上がりが感動的でした。2曲歌ったのですけれど、途中から生徒たちが全員立ち上がって、ステージと客席が一体となって歌いました。

 

田代 楽しかったなあ。先生たちのパフォーマンスに、子どもたちがノってくる。五中生はとくにそういうところがあるかもしれないな。

 

コサイト 想像しただけで、感動しちゃいました。五中生はノリがいいんですね。

 

田代 それに、とても元気です。他の中学校との違いは「朝礼のときに倒れる子がいない」ところかな。

 

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コサイト ええ? 「倒れる」ってどういうことなんでしょう。

 

田代 理由はいろいろだと思いますが、やはり体力の問題かと。おそらく五中生はしっかりご飯を食べて、よく寝ているのではないかな。15年前も今も変わらず、五中の子どもは朝礼で倒れません。

 

山崎 おおらかで…体も大きいと思うのですけれど。

 

田代 体格はいいかもしれないね。とにかく元気がよくて休み時間の様子からして違いますから。一般的に他の学校では、教室や図書室で何かしているのが休み時間の風景なのですが、五中はというと生徒たちが元気いっぱい、グランドをやたらと走り回ったりしているからね(笑)。どちらかというと子どもらしくて野性的で、エネルギーにあふれています。

 

五中が「教育困難校」だった時代

 

コサイト 歴史をたどると、かつてエネルギッシュすぎた時代もありましたね。

 

田代 私が五中で教頭だった時代、もう15年以上も前のことですけれど。

 

コサイト 市内でも噂の「荒れた学校」だったとか。

 

田代 はい、本当に荒れていた時代がありました。校内には当たり前のようにタバコの吸い殻が落ちている、ドアは壊されている…。毎日のように問題が起きていて、その対応に追われていました。そりゃあ大変でした。

 

コサイト そんなに…!

 

田代 問題を起こしているのは一部の生徒なのですけれどね。当時の五中は、いわゆる「教育困難校」でした。何とかしなくてはと、職員たちが一丸となって問題に向き合い、保護者をまきこみ、地域の理解を得て、結果として本当にすばらしい学校へと変わっていったのです。

 

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▲今は植栽の美しさが自慢のアプローチ。荒れていた当時は桜の木も無く、池はゴミだらけだったそう。

 

荒れる子どもたちにのことを決して見捨てることなくきちんと向き合い、保護者や地域に対しても隠すこと無く実情を伝え、支援を求めた五中。その渦中にいた当時の田代教頭。

 

その再生に至るまでの壮絶かつ感動的な「伝説」とは? そして思春期だからこそ大切なものとは何なのか。次回をどうぞお楽しみに。

(取材・編集部 撮影・赤石雅紀) 

 

執筆者

調布市立第五中学校校長・田代和正さん(写真右)と音楽科教諭・山崎朋子さん(写真左)。

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