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いっしょに育て隊

第22回
「自分だけじゃない」と安心してほしい(前編)

2016年3月4日 公開

調布駅からほど近いマンションの一室に「一般社団法人発達心理ライフケア協会」があります(2023年現在、活動は休止しています)。ここでは主に発達障がいを持つ子どもの保護者の相談を無料で受けたり、同じ悩みを持つ人同士が語り合う「茶話会」、学習会の企画などをしています。

 

今回の「いっしょに育て隊」は代表の春日佳奈さん。調布という地域でこのような活動を始めた経緯をうかがいました。

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コサイト 一般社団法人発達心理ライフケア協会は、2011年の設立ですね。

 

春日 はい、今年で活動は5年目になります。

 

コサイト 発達障がいに特化し、相談や勉強会などをしているとのことですが、そもそもこの団体を立ち上げたきっかけは何なのでしょう?

 

春日 直接のきっかけは、わが子の存在です。今年高校生になる息子ですが、子育てに悩んでいた年中から年長のころに、発達障がいの傾向があるとわかりました。そして、知り合いの看護師さんから「春日さん、よかったらここへ行ってみない?」と同じような障がいをもつ子のママたちが集まる会の存在を教えてもらったのです。

 

コサイト そこへ出かけてみたのですね?

 

春日 調布にあるというので、すぐに行きました。そこで「うちの子はこんなで…」と、これまで思い悩んでいたことを話してみたら「ああ、うちの子も同じだったよ」「わかるわかる」って、口々に言ってくれたんです! 

 

コサイト それまでの子育てで、そんな風に言ってくれる人はいなかったということですね。

 

春日 たとえば、「ちょっと元気がよすぎるだけよ」と、励ましていただくことはありました。十分ありがたい言葉でした。でも…実際に親として持っている「困り感」みたいなところは、なかなか共感してもらえなくて。だから、「ああ、やっとわかってくれるママたちに出会えた!」と、本当に嬉しかった。

 

コサイト 悩んでいるのは自分だけじゃないと、気づいたのですね。

 

春日 肩の力が抜けて、心からホッとしました。あのときの感覚は今も鮮明に残っています。

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「育児書」どおりにいかなくて自分を責める

 

コサイト わが子に何らかの障がいがあるということを受容するのも、また大変なことですよね。

 

春日 そうですね…確かにお子さんの障がいを受け入れるのに、すごく時間がかかる方もいらっしゃいます。でも、反対に発達障がいだとわかって安心する方も案外多いのです。それまで「何でうまくいかないんだろう」と悩んでいたけれど、それは自分の子育てが原因ではない、もともとそういう特性を持っているからなんだと納得できますから。

 

コサイト うまくいかないのは、自分のせいだと思って悩んでしまうのですね。うちの子どもたちは、いわゆる「健常」だったと思うのですけれど、決して育児書どおりではありませんでした。発達障がいの傾向があると、よりいっそう「そのとおりにいかない」と感じる場面は多いでしょうね。

 

春日 そして「親としてダメなんだ」と自責の念にかられます。周囲からも「しつけがなってない」と言われることもありますし。

 

コサイト それは苦しいですね。発達障がいとわかってもなお、理解されないことも多いのですか?

 

春日 最近になって、発達障がいのある子どもやその親を支える環境は整ってきてはいます。それでもまだ知らない方が多いなと実感しています。

 

コサイト 自分に関係ないことは、案外知らないものですよね。

 

春日 少しでも発達障がいのことを知ってもらいたい、という思いで活動をしています。

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多くの人たちに知ってもらいたいから

 

コサイト 知ってもらうための活動が「発達障がい児者サポーター養成講座」ですね。

 

春日 より多くの人たちに知ってもらうため、設立以来毎年実施しています。今年で5年目です。

 

コサイト とくに関係者でなくても受講できますか?

 

春日 もちろんです!むしろ発達障がいのことをほとんど知らない、という人にこそ聴いてほしいと思います。全6回の講座ですが、興味のあるテーマのときだけの参加でもかまいません。障がいの有無に関係なく「人との関わり方」、一般的なコミュニケーションにも役立つ講座でもあると思います。

 

コサイト あ、つい先日行われた講座のテーマは「思春期」だったんですね。聞きたかったなあ。もしかして、春日さんの息子さんも、思春期真っただ中では?いろいろ難しいこともありそうですね。

 

春日 それが、想定外な感じだったんですよ(笑)。息子が通っている特別支援級の先生とも連携して、何が起こっても大丈夫なように身構えていたんです。ところが思いのほかすんなり。新しいクラスになじみ、特に暴走することもなく…拍子抜けしてしまいました。

 

コサイト あら〜それはよかった…のかな?

 

春日 そのかわりものすごく弁が立つというか…。私がひとこと言うと、100倍返しぐらいの勢いで言葉が返ってくるようになりまして。まあそのボキャブラリーの豊かさには驚きましたし、そういう形での「反抗」なのかなとも思いました。

 

コサイト ひゃ〜。思い切りガードしていたら、反対側からジャブが入った。

 

春日 そうそう、あれそっちから?みたいな。

 

コサイト 子どもにとっては自然なのでしょうけれど、親にとって思春期はややこしいものですね(笑)。

 

 

春日さん自身、子育ては決して楽ではなかったはず。けれどそれを今の活動に結びつけたのは「何かしていないといられない性分」だから。そして、自分が苦しかった経験があるからこそ、今この瞬間にも孤立して苦しんでいる人を「放っておけない」のだと話してくださいました。

 

「自分だけじゃない」と安心してほしいから続けている活動。後編では春日さんたちが主催する「茶話会」の様子や、あえて調布で活動している理由もお聞きしていますので、どうぞお楽しみに。

(撮影・楠聖子 取材・竹中裕子)

執筆者 一般社団法人発達心理ライフケア協会代表 春日佳奈さん

一般社団法人発達心理ライフケア協会代表 春日佳奈さん

春日佳奈(かすが・かな) 一般社団法人発達心理ライフケア協会代表理事。認定心理士、自閉症スペクトラム支援士。「ちょっとでも気になることがあったら、ぜひご連絡を」(春日さん)

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