調布市では毎年4月第4土曜日を「防災教育の日」として、市内の全小・中学校でそれぞれ防災教育や防災訓練が行われています。
今年度も4月28日に、各校でさまざまな取組が行われました。小中学校に子どもを通わせている方は「引き取り訓練」に参加されたことでしょう。これもまた防災教育の日の取り組みの一環なのです。
コサイト編集部では、この日の午前中に開催された講演会に参加しました。会場は調布市立第五中学校体育館。
「大地震などの災害に備え、今、私たちにできることを学ぶ ~元宮城県石巻市立門脇小学校 鈴木洋子先生 をお招きして~」というテーマでお話を伺うことができました。
鈴木洋子先生は、門脇(かどのわき)小学校で、震災時に校長先生だった方です。
調布第五中学校の体育館には生徒680人に加え、地域の人たちなどでいっぱいです。そんな中、鈴木先生からは、あの日あのときの様子が生々しく語られました。
▲私語もなく整然と体育館に集まる生徒のみなさん。
2011年3月11日14時46分、突き上げるような強い揺れ。校長室にいた鈴木先生は、揺れがおさまるとすぐに校庭に出ました。そこで聞こえたのがサイレンの音と「大津波警報」を知らせる放送でした。「あの時、校庭にいたから放送をしっかり聞き取ることができたのだと思います。外にいて本当によかった」(鈴木先生)
ちょうど下校時刻でしたが、多くの子どもたちはまだ学校内にいたので、すぐに避難訓練のとおりに行動。裏山へと避難を始めました。従来から門脇小学校では「地震が来たらすぐに日和山(ひよりやま・学校の裏手にある高台)に避難」と決めていたので、避難は非常にスムーズだったのだそう。また、子どもたちが避難するので自然と地域の人たちも一緒に日和山へ。後に多くの人達から「子どもたちのお陰で助かった」と感謝されたといいます。
日和山は公園になっていて石巻の街と海が一望できる景勝地です。しかしこの日そこから見えたのは巨大な津波に飲み込まれ、流され、やがて火の海となった街の姿でした。日和山にさえも津波が襲ってくるおそれがあったので、小学校の子どもたちはさらに高いところにある鹿島御児神社(かしまみこじんじゃ)へと移動します。そこで学校から保護者への「児童引き渡し」が行われました。
「日頃の訓練が功を奏し、この日の引き渡しはとてもスムーズでした。かけがえのない子どもの命を守り、保護者にしっかりと引き渡すことができたのも訓練の賜物だと思います」(鈴木先生)
鈴木先生の講話は、いつ起こるかわからない災害に備えるために何が必要なのか…学校現場でできること、保護者や地域の人たちができることを具体的に教えてくださるものでした。当日の壮絶な体験談は、現実だからこそ心に迫るものがありました。門脇小学校でも、すでに下校していた子どもたちの中には残念ながら亡くなった人がいます。それでもまだ学校にいたり、いったん下校しかけて地震があってすぐに学校に戻ってきた子どもたちは全員無事だったことは、訓練の成果だったと言えるでしょう。
後に門脇小学校の子どもたちは「避難訓練どおりに行動したから助かった」と、記録映画のインタビューの中で語っています。災害はいつ起こるかわかりません。平穏な日々を送っているとつい忘れがちですが、地域や学校などで行われる防災訓練には、積極的に参加しておきたいものです。