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いっしょに育て隊

第20回
株式会社山田屋本店 秋沢淳雄さん
地域や子どもたちに「ご飯食」を伝えたい(後編)

2016年1月15日 公開

お米の消費が減り、まちのお米屋さんのあり方が問われている今。創業明治38年、110年の歴史を誇る株式会社山田屋本店の代表、秋沢淳雄さんは「だからこそお米の素晴しさを伝えたい」と、さまざまな事業を展開しています。

 

インタビュー後編は、山田屋本店が取り組む子ども向けの事業から、そもそも秋沢さんご自身の地域活動、そして実は秋沢さんご自身が「パン派」だった(!)という意外なお話へと広がります。

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生産者の顔が見える「安心な食」

 

コサイト 山田屋本店では、お米を販売するだけでなく地域の人たちに向けたイベントを実施していますよね。

 

秋沢 はい。たとえば昨年末は店頭で「餅つき」をしました。今回は兵庫県でコウノトリの飼育・放鳥で知られている地域(豊岡市)の農家の方に来ていただき、お米も提供してもらいました。

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コサイト なぜまた、コウノトリの…?

 

秋沢 コウノトリは、かつて日本中に広く生息していましたが、昭和46年に野生のコウノトリは絶滅しています。理由は、国が米の増産を促していた時期、生産効率を上げるために農薬をたくさん使い、コウノトリのえさとなる、田んぼにいるはずの虫や小魚がいなくなったからです。

 

コサイト 佐渡のトキも同じような理由で絶滅してしまいましたよね。

 

秋沢 そうです。飼育したコウノトリを放鳥するのであれば、周辺の田んぼでは農薬をできるだけ使わないようにしなくてはなりません。

 

コサイト つまり、豊岡で生産されているお米は、安全性が高い米だということなんですね。

 

秋沢 そのとおり。餅つきというイベントですが、参加してくださった方たちには、なぜコウノトリなのかを考えるきっかけになったらと思います。また、その土地の方が実際に来てくださることで、どこのどんな人たちが生産しているのか、「顔の見える関係」を作ることも大切にしていきたいですね。

 

コサイト 安心安全なお米、ということにもつながります。

 

秋沢 日本は高温多湿ですから、まったく農薬を使わずに米を作るのは難しい部分もあります。生産者のみなさんは、そんな中で農薬を最低限にして生産を続けている方たちはたくさんいます。間違いのない生産者が、きちんと作っているのだということを伝えたいと思っています。

 

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子どもたちに「ご飯の素晴しさ」を知ってもらう

 

コサイト 田んぼといえば、「いきものみっけファーム」というイベントを毎年開催されていますね。

 

秋沢 子どもたちに少しでもお米を食べてもらいたい、お米のおいしさを知ってもらいたいという思いから始めました。山田屋本店では、山梨県中央市に自社の工場があるご縁で、近くの生産者と一緒に「いきものみっけふぁーむ」という環境循環型の体験農園を使った田植えや稲刈りの体験会を、調布市、調布市教育委員会の後援を得て、また地元の中央市の協力も得ながら実施しています。

これがとても人気がありまして、募集をかけるとあっという間に定員に達してしまうんですよ。

 

コサイト 何人ぐらい参加するのですか?

 

秋沢 保護者の方も入れたら100人ぐらいでしょうか。たとえば田植えのときは田植えと生き物観察をしたら、あとはどろんこ遊びをします。どろんこでドッジボールをしたり、かけっこで旗を取るゲームをしたり。

 

コサイト 何だかすごいことになっていそうです。

 

秋沢 本当にどろんこになります(笑)。今、調布の子どもたちは土に触れる機会が随分少なくなりましたから、貴重な経験かもしれません。思い切り遊んだあとは、温泉に入ります。さっぱりしたら、炊きたてのご飯で作ったカレーライスやおにぎりを食べてもらいます。

 

コサイト どろんこ、温泉、美味しいご飯…最高ですね。きっと、「あのときに食べたご飯はすごく美味しかった」という記憶として残ることでしょう。

 

秋沢 毎年、春と秋に開催していますので、ご興味のある方はぜひ参加していただきたいと思います。

 

これまでもこれからもずっと地域で

 

コサイト こんなにお米に愛があって、ご飯のおいしさを伝えたいと思っている秋沢さんのご家庭では、どんなお食事をされているのか気になります。

 

秋沢 それがですね…実は私自身は子どものころ通っていた学校の給食がパンだけだったこともあって、結婚するまでは完全な「パン派」だったんです(笑)

 

コサイト ええ〜!

 

秋沢 妻は米屋の娘として育っていますから、当然朝からご飯を食べたいわけですね。しかし私は、朝からご飯を食べるとなんだか重くなるような感じがあって、しばらくはなじめませんでした。子どもの頃からパン食に慣れきっていたんでしょう。今はリハビリも終わりまして(笑)、朝からしっかりご飯を食べられるようになりましたけれど。

 

コサイト それは意外なエピソードですね(笑)。

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コサイト それから、秋沢さんは個人的に地域での活動にも参加なさっていますよね。

 

秋沢 調布に来てすぐ、義父のすすめで調布青年会議所に入りました。そこで地域のいろいろな方たちと知り合い、さまざまな事業に関わることになりました。子ども向けですと30回以上続いている「わんぱく相撲」や、味の素スタジアムができる際には「わんぱくサッカー」なんていうのもやりました。

 

コサイト 今では調布市社会福祉協議会や調布市体育協会でも理事、消防団などさまざまなところで地域や子どもたちのための事業に関わっておいでです。

 

秋沢 消防団は年齢的なこともあり、引退しましたけれど。私は地元で商売をしていることもあり、地域にお返ししていきたいという思いが常にあります。

 

 

コサイト まちのお米屋さんとしては、今後どのような存在でいたいですか?

 

秋沢 お客様の要望にしっかり応えられる店でありたいです。商店街の店も少なくなってきましたが、そんな時代だからこそ何かあったら駆け込んでもらえるような、街の商店としての役割も大切にしたい。防犯カメラがあればいいのではなく、いろんな目で街を見守ることこそが地域のみなさんにとっての安心安全につながるのではないでしょうか。(取材・編集部 写真・赤石雅紀)

 

 

執筆者

秋沢淳雄(あきざわ・あつお)さん 創業110年の老舗米店「株式会社山田屋本店」の代表取締役。地域との関わりも深く、調布青年会議所、調布市消防団を経て、現在では調布市社会福祉協議会理事、調布市体育協会理事なども務めている。

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