幼稚園と保育園。主に母親の働き方によって、子どもが通う先は決まります。でも、最近では幼稚園も「延長保育」や「夏休みの預かり保育」を取り入れるところが増え、幼稚園を利用している「働くお母さん」も増えています。
どちらに預けたらいいのか、迷っている人も多いのでは?
インタビュー後編では、調布市幼稚園協会会長で調布白菊幼稚園理事長の吉田勝重さんと、染地幼稚園園長の原房子さんに、「幼稚園ならではの魅力」を語っていただきました。
それぞれの「良さ」がある幼稚園
コサイト 今、世間では保育園ばかりが注目されているような気がします。けれど、私自身は3人娘のうち2人は幼稚園に通わせていましたから、幼稚園のよさを、少しは理解しているつもりですが…園によって、ずいぶんムードが違うという実感があります。
吉田 多くの幼稚園は私立で、それぞれが独立した運営をしています。つまり園によって内容はかなり違いがあって当然なのです。それぞれの園は工夫を凝らした幼児教育を実践しています。そういう意味で、保護者のみなさんは、説明会などを通してじっくりと見て、選ぶことができるのが幼稚園だと言えます。
コサイト 幼稚園はそれぞれ、いろんな特徴を打ち出していますよね。
吉田 はい。延長保育、給食、園バスなどももちろん選ぶ基準の一つかと思いますが、たとえば体操に力を入れているとか、ネイティブによる英語の時間があるとか、自然遊びが盛んだとか…本当にいろいろです。その特徴をじっくりと見て、選んでいただけるのが幼稚園の魅力なのではないでしょうか。
コサイト 保育園もいちおう選びますけれど、入れないことも多いですから…。保護者はそれぞれの幼稚園の特徴、教育方針をしっかり理解し、納得して入園できるといいですね。他にも幼稚園の良さはあると思いますが、具体的にはどのようなところでしょうか。
吉田 幼稚園ならではというところですと、「幼稚園の教育は、小学校に入学前の準備をすることが基本にある」ということでしょうか。幼稚園教育の中で、団体生活の中でやっていいこと、いけないこと…その基礎をしっかりと身につけさせることを重視しています。たとえば「座って話を聞ける」とか「順番を守れる」といったことなども含まれます。こういったことが身についていれば、小学校になって苦労することも少ないですよ。保育園でももちろんやっていることだと思いますが、幼稚園では特に力を入れている部分です。
コサイト 小学校に進学してから、子どもたちが困らないように…ということですね。
原 保育園と幼稚園、どちらが優れているという話ではないことを申し上げておきます。その理解の上で、しいていえば保育園は親の仕事の都合で預けますが、幼稚園ではこどもを中心に考えています。私自身、フルタイムで働いていて子どもは保育園にお世話になりました。そして幼稚園の園長を務めているのでそれぞれの良さを知っています。そういう経験をふまえて、幼稚園の保護者は、保育園の保護者とは少し違い、子どもとゆったり過ごす時間を持てるという「良さ」があると感じています。
コサイト 私も末娘は保育園にお世話になりました。とても楽しく通いましたが、上の子の幼稚園時代とはまったく違う時間の流れ方だったという記憶はあります。
原 保育園に通っている保護者は時間に追われていることが多いので、どうしても子どもを急がせる場面が多くなりがちですね。私も経験がありますが、
コサイト お仕事の時間がありますから、仕方ないとはいえ…。ゆったりした時間はあまりなかったと思います。
子どものことを一番に考える
原 幼稚園は親同士のコミュニケーションが取りやすいのもメリットだと思います。お迎えの後、立ち話などもできますし、ちょっと公園に寄ってから帰ることだってできます。
コサイト この染地幼稚園周辺は、公園がたくさんありますね。
原 自然がいっぱい、公園がたくさんあるところが自慢です(笑)。ちょっとした時間にお母さん同士でおしゃべりしたり、公園でランチを食べたりしています。一緒に遊んで仲良くしておくと、小学校に入ってからもいい関係でいられることが多いようですよ。
コサイト 幼稚園には幼稚園の良さがあるのですね。
吉田 先ほど、原先生もおっしゃっていましたが、幼稚園は何よりも子どものことを一番に考えています。幼稚園の日々の中では、いろいろなことが起こりますが、対応するときにとにかく大事にしているのは「子どもにとって何が重要か」という考え方です。これはすべての幼稚園に共通することだと思います。
コサイト 子どもの一番を考える…そこはブレない部分なのですね。
吉田 そうです。幼稚園は子どもにとって一番いいことを考え、何があっても子どものことを一番に考える、それが調布市の全幼稚園共通の思いです。同時に、お母さんたちの就労支援につながる「延長保育」なども、現状にあわせて実施している。幼稚園は時代に合わせて変化しているのです。
原 働いていない場合でも、夏休み中に少しでも預かってほしいという声はあります。お母さんがリフレッシュして笑顔になったら、子どももまた幸せですからね。
コサイト 子どものための預かりでもあるのですね!
原 そうですよ(笑)。今、働くお母さんたちが増えていますので、中には「私も働かなくちゃ」と焦っている方もいらっしゃるのではないかと思います。けれど、幼稚園時代のゆったりした時間もまたいいものですよ。ぜひそんな「幼稚園ならではの良さ」を満喫してほしいですね。
吉田さんと原さんは「調布の幼稚園もこのままでは危ない」という危機感をお持ちです。そして「子どもを最優先」した幼児教育をこれからも大切にしていきたいと考えています。今後ますます「働きたい母」は増えることでしょう。そんな中で、「幼稚園の良さも残すために、できることを精一杯やりたい」というお二人の気持ちが強く伝わってきました。調布の幼稚園の「これから」に期待しましょう!
写真左・吉田勝重(よしだ・かつしげ) 調布白菊幼稚園理事長、調布市幼稚園協会会長。写真右・原房子(はら・ふさこ)染地幼稚園園長。