調布子育て応援サイト コサイト

調布市の行政、民間の子育て情報が一つに。 子育て中の人とまちをつなぐポータルサイト

いっしょに育て隊

第54回
調布市立上ノ原小学校PTAの皆さん
ゆるやかにつながる新しいPTAのカタチ(インタビュー後編)

2023年3月9日 公開

「できることを、できるときに、無理のない範囲で」をモットーにPTA改革に取り組み、2022年度から挙手制による自発参加型へと舵を切った調布市立上ノ原小学校PTA(詳しくは前編で)。かつての半ば強制的な係決めや当番制を廃止し、必要に応じてその都度ボランティア参加者を募集するスタイルに変わりました。

 

改革の一環として開発、導入したアプリに込められた思いとは?

 

ゆるやかにつながるPTAを目指して

 

コサイト 編集部でも「Hi!(ハイ)」をダウンロードして少し触ってみたのですが、直感的に操作できて機能もシンプルですね。

 

遠藤 上ノ原小学校PTAではこれまでの経験もふまえて「ゆるやかなつながり」を大切にしたいと考えています。ですからアプリ開発にあたっては、保護者同士がアプリを介して個別に連絡を取る機能はつけていません。SNSのようにいつでも個別に連絡できるような密なつながり方ではなく、ある程度の距離を保てるのも特徴です。

上ノ原小学校のPTA改革!アプリでゆるやかにつながる

コサイト あえて機能を限定したのですね。それはなぜ?

 

遠藤 PTA運用アプリに求める機能は学校によって違うと思います。実際、ビジネスで使うような多機能ツールを採用しているPTAもありますしね。

 

以前、こんなことがありました。ある活動のボランティア参加者を募集したところ複数の方たちが手を挙げてくれました。そこで「ここからは立候補してくれたメンバーでSNSのグループを作って進めてください」とお願いしたところ「それなら辞退したい」という方が出てしまって…。

 

コサイト 「ゆるやかなつながりの中で協力できれば」と手を挙げてくださったのですね。

上ノ原小学校のPTA改革!アプリでゆるやかにつながる

 

小学生の保護者にも広がる「孤育て」

 

コサイト 親同士の密なつながりはちょっと…という方もいらっしゃいますよね。

 

遠藤 地域に知り合いができることもPTA活動の醍醐味の1つだと思うのですが、それが苦手な方もいますよね。心地よいつながり方というのも、人それぞれですから。

 

須藤 「Hi!」はボランティア活動への応募とPTAのお知らせを閲覧することに特化しています。アプリを使うことでゆるやかにつながりつつ、お知らせを見て、できるときだけボランティアに応募すればいいので気負わずに使えます。

 

遠藤 よく乳幼児の親が育児中に孤立してしまう「孤育て」が話題になりますが、実は小学生の保護者の間でも「孤育て」は広がっていると感じています。だからこそ程よい距離感を保ちながら、ゆるやかにつながっておくことが大切だと思うんです。

 

有馬 アプリを見ればPTA活動の状況が分かりますし、都合がつくときや気が向いたときに気軽にエントリーして、参加した現場で誰かと話すこともできます。

 

コサイト 完全に孤立しないように、ですね! 求めるつながり方は人それぞれかもしれませんが、ゆるやかなつながりがあれば…。人にはどこかで「つながりたい」という思いがあるはずです。

上ノ原小学校のPTA改革!アプリでゆるやかにつながる

須藤 コロナ禍の数年間で「学校との心理的な距離ができてしまった」と感じている方もいると思います。学校に出向く機会も少なく、親睦会など保護者同士の交流もほとんどありませんでしたから。PTAに知り合いもいない中、一人で参加するのは心細いと感じているのかもしれません。

 

コサイト やってみたいと思っても、初めてで活動内容がよく分からないと、手を挙げるには勇気が要るかも!?

 

須藤 そう思います。だからこそ初めての方が不安なく参加できるよう「これならできそう、やってみたい」と思えるような情報発信も大切にしないと!

上ノ原小学校のPTA改革!アプリでゆるやかにつながる

 

アプリ開発もボランティアとして

 

コサイト ところで、アプリ開発の費用はPTA会費から出したのでしょうか?

 

遠藤 今回は安東さんの会社から無償で提供していただきました。

 

安東 「Hi!」はPTAというボランティア組織の運用をサポートするアプリなので、「ボランティアとして無料で提供することに意味がある」と考え、協力させていただきました。

 

コサイト アプリ提供もボランティアというわけですね。

上ノ原小学校のPTA改革!アプリでゆるやかにつながる

 

調布から全国へ! 広がるアプリの反響

 

コサイト 上ノ原小学校PTAの取り組みが知られるようになって、「Hi!」を使いたいという学校も出てきているのでは?

 

安東 すでに北海道から九州まで、さまざまな学校で使っていただいています。

 

コサイト おぉ~、そんなに反響があったのですね!

 

安東 直接問い合わせがあったり、アプリのレビューページに要望が寄せられたりしたので、各学校のPTAがそれぞれのスタイルに合わせて使えるように細かな修正を重ねてきました。基本的な機能は変わりませんが、ポイント制への対応のほか、小学校、中学校に加えて小中一貫校でも使えるようにしました。最近では幼稚園のPTAで使いたいというリクエストがあり、対応を検討しているところです。

 

コサイト 反響の大きさは今までのPTAの在り方を見直したい、変えたいというムーブメントの表れとも言えますね。

上ノ原小学校のPTA改革!アプリでゆるやかにつながる

 

PTA改革で大切にしてきたこと

 

コサイト これからPTA改革に乗り出そうとしている学校も多いと思います。改革を進める秘訣はなんでしょう?

 

遠藤 PTA改革のカギはアプリなどICTの活用だと思われがちですが、個人的にはハート&ソウルが大切だと思っています。

 

コサイト ハート&ソウル!  熱いですね~。

 

遠藤 昭和感が強いと言われますが(笑)、思いを伝えて共有することこそが大事だと思っています。私たちの場合、どんなPTAを目指したいかという思いを共有して、それを実現するための手段としてアプリを導入しました。

 

コサイト 地道にコツコツと共感を得ていったわけですね。

 

須藤 アプリ導入ありきではなく、話し合いの積み重ねがあったからこそ、改革への第一歩を踏み出すことができたのだと思います。

上ノ原小学校のPTA改革!アプリでゆるやかにつながる

遠藤 PTAは学校と保護者が一体となって、地域の皆さんとも力を合わせて活動するわけですから、まずは校長先生や副校長先生に相談して理解していただいた上で、関係する地域の団体や組織の方々に今の保護者の実状や今後のPTA改革の方向性について、何度となく話を聞いていただきました。

 

コサイト 保護者の共働きやワンオペ育児、介護と育児のダブルケアなど、家庭の事情も一昔前とはだいぶ違ってきています。

 

遠藤 そのあたりも地域の多世代の方と共有することが大切だと思います。「分かってくれているだろう」ではなく、とにかく向き合って話すことです。

 

コサイト PTAの在り方についてメディアで取り上げられる機会が増え、コロナ禍でオンライン会議なども幅広い世代が使うようになりました。デジタル化に対する理解が進んだことも追い風になりそうです。

 

有馬 時代の波に乗って改革を進めるには良いタイミングだと思います。実際には課題も出てくるし、いろいろな意見があるのも当然のこと。とにかく異なる意見の人とも同じテーブルについて話すことが大切だと思います。

上ノ原小学校のPTA改革!アプリでゆるやかにつながる

 

うまくいかなかったら修正すればいい

 

遠藤 目指すPTAのカタチは学校や地域によってさまざまですし、時代によっても変わっていくものだと思います。私たちが進めている改革も、本当に正しいかどうかはまだ分かりません。とにかくやってみて、失敗もして、その都度修正していけばいいのではないでしょうか。押し付けられて苦しみながら続けるよりも、多少の苦労はあっても、自分たちが動かしているという手応えがあるほうがいいですよね。

 

コサイト 勇気を出してやってみれば、その先が見えてくると。

上ノ原小学校のPTA改革!アプリでゆるやかにつながる

有馬 私たちの場合も「とりあえずやってみよう!」と動き出した結果いろいろと課題が出てきましたし、今年度の状況を踏まえて次年度から軌道修正していくこともあると思います。

 

須藤 いろいろと試行錯誤しながらも、子どもたちのためのボランティアという基本を忘れずに、みんなで助け合って前向きに活動していければいいなと思っています。

上ノ原小学校のPTA改革!アプリでゆるやかにつながる

PTAについては、その存在の是非を含めさまざまな声がある中、思い切って改革に乗り出した上ノ原小学校PTAの皆さん。うまくいくかどうかは分からないけれど行動に移してみる――なかなか勇気が要ることですね。今のスタイルがしばらく定着するのか、近い将来また方向転換していくのか…。いずれにしても、失敗を恐れず改革への一歩を踏み出した皆さんにはエールを送りたくなりました。今後の展開が期待されます!

 

取材会場 株式会社OpenDNA https://open-dna.jp
撮影 赤石雅紀

執筆者

写真左から 須藤伸子さん 遠藤晃弘さん 有馬美穂さん(調布市立上ノ原小学校PTA 2022年度役員) 右:安東裕二さん(株式会社OpenDNA代表取締役)

ページトップへ