毎年冬に流行するインフルエンザ。もしかしたら「ワクチンを接種しているので、自分はもうかからない」と思い込んでいませんか?実はこの誤った理解が、インフルエンザの感染を拡大させていると、調布市医師会の貫井清孝先生(小児科)は話します。
「『インフルエンザワクチンを接種していれば、今シーズンはインフルエンザにかからない』と考える人が多く見受けられます。ワクチンは感染や発症を防ぐものではありません。現在日本で行われている予防接種では、血液中に抗体が作られます。一方、インフルエンザウイルスは鼻や咽頭粘膜上皮細胞に感染、増殖するので、血液中の抗体だけでは増殖を止められない、つまり感染・発症を封じることはできません。しかし、鼻や咽頭で増殖したウイルスが血液の流れに乗って、心臓や肺、筋肉などに広がることは阻止できます。つまり、命に関わるような重症化は予防できるのです」(貫井先生)
したがって、ワクチン接種を受けた人が急に発熱したときに「ワクチンを打っているからこれはインフルエンザではない。ただの風邪だから大丈夫」と自己判断するのは危険。インフルエンザかどうかの確認をすることなく、解熱後すぐに保育園や幼稚園、学校へ登園・登校させれば、感染の拡大につながる可能性もあります。
「保育園や幼稚園、学校などでは、インフルエンザなど感染症によってそれぞれ出席停止期間が定められています。これは症状が落ち着いてからも数日は周囲に感染させてしまう可能性があるから。これは成人の場合も同じこと。大人は解熱後すぐに自己判断で仕事に出てしまうことが多いので、結果として感染拡大の先導役になっているとも言えます。調布市医師会で行っている感染症調査でも、感染者数は流行し始めの頃は成人の方が多く、ピークの頃には未成年の方が多くなる傾向が見られます」(貫井先生)
大人の場合でも、文部科学省が定めた出席停止期間である「発症(発熱)後5日間、解熱後2日間」は自宅で安静に過ごすことが望ましいとのこと。忙しくてなかなか休めないという事情もありますが、子どもたちをインフルエンザから守るためにも、それぞれがインフルエンザについて正しく理解し、できるかぎり感染を拡大させないよう心がけましょう。