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このコラムも5回目。子どもたちと一緒に、私たちが暮らす地域にある身近な自然に触れ、環境について考えてきました。パイオニアキッズ菊野台園が特別な保育園で特別な教育を行っているということではありません。大切にしていることは、子どもの「やりたい」「知りたい」という気持ちに寄り添い、一緒に考えるということ。
「これまでもお伝えしてきましたけれど、私たち保育者は、子どもたちの『これ何だろう』という声を聞いたら、できる限り『なんだろうね』『調べてみようか』と促します。大人でも知らないことはたくさんありますから、一緒に調べてみると、さらにもう少し知りたい…と関心が深まっていきます。日々、その繰り返しです」(園長先生)
親子で徹底的に調べるのもよし、ちょっと調べてまた次の関心に移るもよし。子どもの「気ままさ」に付き合うのも楽しいものです。
そこで今回は「常にいろいろなものに興味や関心が広がり続けている」という、「りぼん」チームの子どもたちと一緒に出かけてきました。
「りぼん」チームの子どもたち(3歳から6歳までの異年齢クラス)では、これまでもずいぶんいろいろなことをテーマで活動してきました。身近な自然の中でも四季折々にさまざまな生き物や植物の様子を見ることができますね。子どもたちは野川で出会える蛇や亀などの生き物、散歩の途中でみかける椿や山茶花など季節の花々、どんぐりなどの木の実や草の実など、実にさまざまなものに興味を持ってきました。お部屋の中も、子どもたちの戦利品?がたくさんです。
そんな彼らが、今まさに関心があるのが…霜!
きっかけは「大寒」
「二十四節気七十二候」をご存知ですか?七十二候とは古代の中国で考えられた季節を表す方式で、比較的知られている二十四節気をさらに3つに分けているというもの。パイオニアキッズでは春夏秋冬を知るツールとして取り入れているのだそう。
さて、その二十四節気「大寒」のころ。それは川の水も凍るほど、一年で最も寒い時期だということを知り、そこから子どもたちは氷や霜に関心を持つようになりました。
「おにわの池も氷がはるかなあ」
「霜柱を見てみたいな」
そう盛り上がったのは、取材をした日から1週間ぐらい前のことだったそう。
ところがその時期、調布市周辺の天気は晴れ続き。気温もあまり下がらず空気も乾燥していたので、なかなか霜や氷に出会うことができませんでした。
先生と子どもたちは考えました。
「どれぐらい寒いと氷がはるのかな」
「霜ってどうやってできるんだろう」
調べてみると次のことがわかりました。
- 氷は水温が0度になるとできる。
- 霜は土の中の水が凍ってできるので、土が乾いていないほうがいい。
- 日陰のほうが寒いから霜も氷もできやすい。
というわけで、取材した日の前日、子どもたちは園庭に水をまいて帰ったのでした。
先生「じゃあ、霜と氷があるかどうか見に行きましょう!」
久しぶりに雲の多い、気温の低い朝。園庭に出ると…池の水は凍っていませんでしたが、水をまいたあたりを少し掘ってみると…
子ども「あ!霜があった!」
子ども「見て見て!」
小さな小さな霜柱がありました。
土の中の温度を測ってみると1度。きっと朝早く寒い時間帯に、まいた水が凍ってかわいい霜柱になったんですね。
先生「じゃあ、昨日野川で調べておいた『霜や氷がありそうなところ』まで行ってみましょう」
野川の水が氷になってる!
この日はどんよりと曇った寒い日。
先生「今日は雲が多いね。昨日よりあったかい?それとも…」
子ども「きのうよりさむい!」
先生「寒いよね〜。もしかしたら氷が見つかるかもしれないね」
冬は寒いということを実感しながら歩きます。こうして体験を通して対話を重ねることで、自然と理解が深まりますね。大人にとってのあたりまえも、子どもには初めての気づきだったりして。
少し歩くと…ありました!川面に氷がはっています。そして川岸には霜らしき姿も。
子ども「見て〜氷!」
子ども「わたしも〜ほら〜」
子ども「つめたい〜〜」
盛り上がってきました。
小さな霜柱もあります。測ってみると…
先生「5ミリ!うーん、まだ小さいねえ。こっちは…6ミリ」
水温はマイナス1度。川でも流れがよどんでいるあたりは広く氷がはっていました。
かじかむ手を擦りながらも氷で遊びます。
「ねえねえ、あったかいよ」と言って見せてくれたのは、河原に落ちていた石。
「石で手をあたためているんだ〜うふふ♪」
少しだけ日差しがあるときに太陽の熱を吸収して温まっていたのでしょう。氷と比べると格段に…「生ぬるい」感じがします。ぼくも、わたしも、と子どもたちは石で手を温めていました。
霜柱ザクザクへの憧れ
とても寒かった一日。川の水で濡れた地面にも薄い氷がはっていました。踏むとバリバリと割れて楽しいったらありません。でも「りぼん」チームの憧れは、氷ではなく、長い霜柱をザクザクと踏んで歩くこと。先程の小さな霜柱では物足りないのだそう。
「この間、霜柱ができるまでの動画をみんなで見たのです。早送りの動画だったので霜柱がにょきにょきとできてくるように見えました。それを見てテンションが上ったんですよね(笑)」(先生)
何センチもある霜柱をザクザク…憧れる気持ち、わかります!この日、見つけた霜柱は1センチ以下の小さいものばかりで、「ロング霜柱ザクザク」とはいきませんでした。けれど、氷はたくさん見つかりました。厚いもので7ミリほど。
子ども「石を投げても、割れないよ!」
子ども「こんなに大きな氷がとれたよ!」
大きな氷を河原まで運んできては地面に落としたり、踏んだりして割るのもまた楽しいもの。自然にできた氷や霜でここまで遊べるなんて、野川が近くにある幸せですね。
小さなかけらになった氷を、今度はパズルのように元の形に戻そうとしている男の子がいました。
先生「ほほう、こういう遊び方をするのは初めてじゃない?」
子ども「これは…ここかな」
先生「わあ、ぴったり。すごいすごい」
かなりバラバラになった氷のかけらを、かけら同士の形がピタリと合うところに次々と置いていきます。子どもは遊びの天才とはよく言ったもの。まさにそんな「天才ぶり」を見せてもらうことができました。
今日見つけたものは何ですか?
保育園に戻る前に、みんなで集まって「サークルタイム@野川河川敷」。お散歩で見つけたものを一人ひとりが発表しました。
先生「今日、みんなは何を見つけましたか?一人ずつどうぞ」
子ども「にわに水をまいたら、しもばしらがあった!」
子ども「太陽が当たるところはだめだった」
子ども「水がもっとあったほうがよかった」
子ども「霜柱に会いたかった…」
先生「ほんの少ししかできなかったね。また実験してみようね」
子ども「あのね、石があったかかった」
先生「なんでかなあ」
子ども「かれ葉の下にあったからだよ」
先生「落ち葉の下は暖かいものね」
子ども「こおりに石をなげてもわれなかったよ」
先生「割れなかったね。分厚い氷がはっていたね」
子ども「きのうは氷がなかったけれど、きょうはあったよ」
先生「昨日と今日は何が違うのかな」
子ども「さむさがちがう!」
先生「昨日より今日のほうが気温が低いんだね」
子ども「きのうは、晴れていたけれど今日は曇りだから」
先生「だから氷がたくさん見つかったんだね」
子ども「氷を持ってかえりました」
先生「うふふ、袋に入れていたものね。帰ったらどうなっているか見てみようね」
子ども「コサギの羽をみつけました」
先生「わあ!きれいね」
子ども「氷の上に乗ればよかったな」
子ども「スケートしたいな」
先生「スケートできたら楽しそうね」
霜と氷探しにあけくれたお散歩でしたが、その間にもカワセミが飛び交い、スズメやコサギ、アオサギやカルガモなどいつもの野鳥たちにも会えました。
親子で近くの自然を訪ねたら、ぜひこんな「振り返り」をしてみてはいかが?楽しかった記憶をママやパパと振り返る時間は、子どもにとっては最高に嬉しいひとときになることでしょう。
見てきたものを描く
園に戻った子どもたちは、お昼ご飯までの少しの時間、見てきたものを絵に描くことになりました。
お部屋には使い込まれた図鑑がたくさん置いてあります。思い思いに図鑑を開き、氷の絵…ではなく、鳥の絵を描いている子がほとんどです。
本物はしっかりと見てきたけれど、絵を描くときはまた図鑑を見て描くのですね。羽の色やくちばしの形など、こうして描くことで自然に覚えてしまいそう。
コサギの羽を拾った女の子は、キレイな羽の絵を書きました。実物の羽も添えてあります。
「絵を描くといっても、最初は何を描いていいのかわからない、という子もいました。今ではこうして、自分の描きたいものをそれぞれの感性で描けるようになってきました」(先生)
確かに…見てきたものを描くといってもどうしたものか、大人でも悩みそう。感じたことを形にする=絵を描くことでまた何かがしっかりと子どもたちの中に刻まれていくのかもしれません。
子どもたちの「好き」や「知りたい」を伸ばすためのヒントを、パイオニアキッズ菊野台園の自然環境教育を通してご紹介してきたコラム「学ぶチカラ・考えるチカラ」も次回が最終回。初回でご紹介した「野川の水」から始まった活動は、水源であるカニ山での観察からさらに広がり、とうとう「流れていく先」を探しに、ちょっとした旅に出ることになりました。取材チームも「旅」に密着取材の予定。どうぞお楽しみに。(撮影・赤石雅紀 取材・竹中裕子)
霜柱をザクザクしたい!
パイオニアキッズ菊野台園(ぱいおにあきっずきくのだいえん) 調布市菊野台の住宅街に立つ、認可保育園。乳児期から ニュージーランドの教育省から正式に許可を得て、ナショナルカリキュラム「テ・ファリキ」を活用し、自らの意志で遊びを決めてそれぞれの部屋へ行く「コーナー保育」や「異年齢保育」が行われています。また、北欧で盛んな「森の幼稚園」の概念も取り入れ、積極的に戸外活動を行っています。