思春期は子どもから「目を離さない」ことが大事といいますが、とくにどんなところに注意したらいいでしょう?(中2男子・小5女子の母)
回答:西牧たかねさん
(元調布市立中学校教諭・ 調布市子ども・若者総合支援事業学習コーディネーター)
しっかり「見て」、子どものサインを見逃さない
子どもの自立のために「手を離す」ことは重要(第13回子育てお悩み相談室参照)です。そして「手は離し」ても目を離してはいけません。しかしそれは、監視するということではないのです。「監視」の背景には、「子どもの行動を親がコントロールする」という姿勢がありますね。
「目を離さない」というのは、正真正銘の親の出番がやってきた時に、そのタイミングを逃さないという意味なのです。
思春期に入ると、子どもは親に「かっこ悪い自分」を見せたがらない傾向が強まります。だから、たとえば学校でいじめられていて苦しくても、サインを出さないことが多いのです。
さあ、そんな時こそ親の出番。もちろん見ようとしても見えないこともありますし(そう心にとめておいてください)、全部見えないからといって、むやみに嘆く必要はありません。
「その子が出す微細なサインを見落とさないように心をくだく」ことが大切です。
思春期は、わが子への接し方を見直すチャンス
親は、子どものことを見ているようで、実は見ていないことがあるものです。親の望むとおりにしたいと思うほどに、本当の子どもの姿は見えなくなっていくもの。なぜなら、親が描く理想像と比較することばかりに意識が集中してしまうからです。
思春期は、子育てを見直すチャンス。思春期に入って子どもの様子が「変わってきたな」と感じたら、わが子への接し方をふり返ってみましょう。
大切なことは、子どもの気持ちを受け止める姿勢であり、親としての「構え」です。よく「うちの子は、ちっとも話してくれない」と嘆く方がいます。思春期は、何を言っても「マジ意味わかんない」など、語彙も少なく、同じような答えしか返ってきませんしね。
でも、たとえばこの「マジ意味わかんない」という言葉の中に、実は何通りもの意味があるのです。それは「言われるまでもなく、わかっている」とか「自分をもっと信じてほしい」という訴え、あるいは、自分でも言葉にできないもどかしさから出ているのかもしれません。その子のちょっとした表情や態度の違いから、本当に訴えたい気持ちを推測してみましょう。少なくとも言葉通りに受け止め、「キレ」ないようにしてくださいね。
「目を離さない」ための方法に正解はありません。その子の性格、親子の関係性などさまざまですから、ケースバイケースです。
大切な心得は次の2つ。
・子どもの様子をしっかり見る(知る)
・子どもの気持ちを汲み取る姿勢を忘れない
「他人」の力も借り、みんなで「見守る」
親だけがわが子を見守るのには限界もありますから、親同士がつながり、お互いの子どもを見守る関係性があると助かります。思春期こそ、地域のいろいろな人にも力を借りましょう。
子どもは親の言うことは聞かなくても、どこかで本当の気持ちを話せる大人の存在があると安心して過ごせます。そのためにも、まずは日頃から地域や親同士のつながりを大切に。交流の機会があれば積極的に参加し、関係性を作っておきたいものです。
思春期の子どもは、日々成長しています。親を追い越す時期でもあるのです。そんな子どもの変化を受け止め、しっかりと見守っていけたらいいですね。