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いっしょに育て隊

第2回
山田はるこ さん(街のアトリエ1号室 スタジオげん)
子どもの「こうしたい」という気持ちを大事にする

2015年4月17日 公開

初夏を思わせる日差しが眩しい中、調布卸売りセンター(深大寺元町1丁目)の一角にある「街のアトリエ1号室」を訪ねました。

アトリエ概観

 

木の香りが漂う落ち着いたアトリエでは、幼児向けクラス「おそとであーと」の真っ最中。すぐ近くの野川で拾ってきた樹の枝や葉っぱ、草花などを、思い思いに画用紙に貼っていきます。

 

コサイト 子どもたちはずいぶん熱心でしたね。子どもたちが自分のやりたいことをちゃんと主張していた姿も新鮮でした。

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山田さん 「こうしたい」「ああしたい」ということがどんどん出てくるので、私は「そうなんだ。じゃあ、どうする?」って一緒に考えて「これはどう?」と提案したり、ただ見守っていたりします。そのやりとりの繰り返しです(笑)

 

コサイト 3歳のお子さんが、けっこう太い枝を「立てたい」と言ったとき、私は心のなかで「それは無理!」って叫びました(笑)。でも山田さんは「へえ、面白いね」って受け入れちゃうので驚きました。

 

山田さん でも結果として出来上がった作品を見ると、あの太い枝は寝かせてあります。大人はあの枝を見ただけで「立たない」ってわかりますが、3歳の子どもにはわかりません。ここでは子どもの「こうしたい」を、とりあえずやらせてあげることを大事にしています。失敗してもいいんです。

 

コサイト やりたい気持ちをちゃんとわかってくれるから、子どもたちははるこ先生のことが大好きなんですね。

 

野川の豊かな環境が間近にある「街のアトリエ」

 

コサイト 山田さんが子ども向けのアート教室をやろうと思ったきっかけは?

 

山田さん ものづくりの機会が減ってきたという危機感からです。世の中はデジタルで便利なものであふれています。そういう中で知らず知らずのうちにものづくりの経験ができなくなってしまいました。でも、「こうしたい」「ああ、できない」「くやしい」という気持ちは体験しないとわかりません。デジタルで便利な社会を否定はしませんが、やはり私は、本来人間が持っている「原始的な感覚」は絶対に失ってはいけない、という思いが強いのです。

 

コサイト 「おそとであーと」では、子どもたちが自分で感じて、表現することを自然にやっていましたね。

 

山田さん アートとはアイデンティティを表現する活動です。だから作品を制作するときには、なぜその材料を使うかというところまで理由が求められるものなのです。だから「おそとであーと」は、「自分で選んで採ってきたものを使う」をコンセプトにしています。

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身近な自然を一緒に楽しむ

コサイト 自分で材料を調達するんですか。

 

山田さん 「そこに自分が住んでいるんだもん。自分はその文化の中の人なんだもん」っていうことです。外で落ちているものを拾ってくるのは簡単なことのようですが、実はものすごく文化的な活動だったりもするわけです。

 

コサイト 「街のアトリエ」が野川のすぐ近くにある理由は、そういうことだったんですね!

 

山田さん いいですよ~野川。いろんな生き物がいてすごく楽しいんです。そうそう、今日はカワウもいましたよ。水中に潜って猛スピードで泳ぐ様子が見えて、びっくりしました。そんな野川の様子を見てきたあとに、4歳の女の子が描いた絵がこれです。野川の感じがよく出ているでしょう。

名作

コサイト 左の鳥はカワセミでしょうか?

 

山田さん そうかもしれません。ただ本人は具体的に「これはカワセミ」とは言っていなかったのでわかりません。(笑)

 

〇〇大研究

 

〇〇大研究

山田さん これは3人の合作で「〇〇大研究」という作品です。「〇を描いてみよう」と言ったら「じゃあ、おだんごでもいい?」「おんなのこをかきたい」と、ただ〇を描くのではなく、〇を面白く描くアイデアがどんどん出てくるんです

 

コサイト 大作ですね。大きな模造紙に描くのは、意外と大変だったのでは?

 

山田さん はじめは、一人一枚の画用紙に描くときと同じようなサイズのちぢこまった〇を描いていました。途中で「〇を探しに外へ行こう」と言って丸い形を探してもらいました。ドアノブとか配管のパイプとか…たくさん丸いものを見つけました。シャボン玉もやりました。そしてまたアトリエへ戻ってきて絵の続きを描いたら、ぐんと大胆に描けるようになったんです。

 

コサイト 実際に見て、たくさん感じて、描きたくなったんですね!

 

まるまる大研究

山田さん これも〇〇大研究のとき、男の子の作品です。色鉛筆を削ったら、削りかすがチーズやのりになるって気づいたみたいです。

 

コサイト いろんなアイデアがどんどん出てきますね~。絵だけじゃなくて工作もするんですか?

 

山田さん もちろん、いろいろやっていますよ。この写真は子どもたちが作った船を、実際に浮かべているところです。

野川にふね2

野川にふね

コサイト 野川があってこそのアトリエですね! 楽しそう。

 

山田さん かなり楽しんでいます(笑) 

 

コサイト いっしょに楽しんでくれるはるこ先生だから、子どもたちも喜んで通ってくれているのでしょうね。

 

 

 

執筆者 山田はるこ(やまだ・はるこ)

山田はるこ(やまだ・はるこ)

2006年東京芸術大学大学院美術研究科芸術学専攻美術教育終了。2012年Royal Academy Summer Exibition入選(ロンドン)。保育園における芸術教育研修を実践。2014年には調布卸売センター内に「街のアトリエ1号室 スタジオげん」を開設。「あーとABC」「おそとであーと」など子ども向けアート教室のほか大人向けの講座も開催。

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