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入学前に育てたい子どものチカラ
小学校へ入学する前に養っておきたい子どものチカラとは何でしょう?
2020年からは学習指導要領が新しくなり、主体的・協働的な学習(アクティブ・ラーニング)が重視されるようになります。主体的に学ぶということは、つまり「知りたい」という気持ちになって積極的に「学ぶ」ということ。
幼児期までに大切なことは、「さまざまなことに興味関心を持つことができる土台作り」かもしれません。では、子どもの「好奇心」を育てるために親ができることは何なのでしょう。調布市にあるパイオニアキッズ菊野台園における日々の保育の中に、そのヒントがありました
子どもの「なぜ?」「どうして?」に応えている?
「ママ〜みてみて!」
「これなあに?」
子育て家庭によくある風景。大人から見れば「そんなこと」と思えるようなことだったりもしますが、子どもにとっては大発見。好奇心の芽を育む絶好のチャンスです。
パイオニアキッズ菊野台園では、自然や環境をテーマにした保育を行っています。難しそうに思えるかもしれませんが、決して大人からのお仕着せではありません。子どもたちの日々の生活の中から芽生えた疑問や関心が、いつしかクラスみんなのテーマとして育ってきた結果なのだそう。
今、年長さんたちが追いかけているのは「水の循環」。う〜ん、なんだか難しそうですね。でも、始まりは子どものちょっとした「つぶやき」からでした。
「雨の水はどこから来ているの?」
雨は雲から降ってくるけれど、その雲は海の水が水蒸気となってできたもの。海の水が雲になって、陸上に雨を降らせて…雨の水はいったいどこへいくの?先生と子どもたちは、時間をかけて対話し、「知りたい」という気持ちがどんどん膨らんでいきました。
わからないことは、大人も一緒に調べる
降った雨は地面に染み込み、野川の水源として湧き出している…。そこまで調べることができた子どもたちは、調布市内にある「水源」探しのプチ遠征。編集部とカメラマンの取材クルーも一緒に楽しく歩いてきました。子どもたちに同行するのは、大学院で幼児教育と環境教育を研究している光橋翠さんです。春からずっと年長さんグループの自然保育の伴走者として、活動をともにしています。
▲子どもたちから「みどりさ〜ん」と声がかかります。
さあ、園を出発です。ほどなく、道端で見つけたのは蝶の亡骸。
「どこかに埋めてあげようね」
と先生がそっと拾い上げ、子どもたちに見せました。ただそれだけの出来事でしたが、子どもたちはそれぞれに何かを感じ取っているようです。
てくてく歩いて、野川沿いの道へと入りました。
「あ!ねえねえ見て!」
川面にスラリとした鳥がたたずんでいました!
「アオサギだね」
「うんうんアオサギだ」
と野鳥に詳しい子どもたち。シラサギの姿も!
「ちがうよ、あれはダイサギだよ」
「だ、ダイサギ?」(取材班の声です)
実はシラサギにも種類があるそう(知りませんでした!)。
「大きいのがダイサギ、足に黄色い靴下を履いているのがコサギ!」
と、子どもたちが教えてくれました。
子どもたちは、日頃から何かを見つけると先生が持っている「図鑑」で調べています。
お散歩のときにポケットサイズの図鑑を数冊持ち歩くなら、それぞれのご家庭でもできますね。大人だってわからないことはたくさんあります。そんなときは親子で調べればいいのですから!
この日はその後も次々と野鳥に遭遇。黒い鳥がわっさわっさと飛んできて、カラスかと思ったら「カワウ」でした。しかも水鳥なのに電線に…。他にもカルガモやキセキレイなどの姿もありました。子どもたちが次々と見つけてくれたおかげです。大人とは視線も、見えるものも違うのかもしれません。
▲電線にカワウ!
自然の世界に「おじゃまします!」
さて、一行は野川沿いの道から、河川敷へと下りて行くことになりました。その先にある「野川の源流」が流れ込む水路を見にいくために、です。河川敷に下りる前に、同行の翠さんが言いました。
「さあここからは自然の世界。自然の世界にご挨拶してから入りましょう」
子どもたちは口々に「おじゃましま〜す!」と挨拶をしてから一歩、河川敷に踏み入ります。私たちはそこにある自然を「あたりまえ」のものと思っています。けれど、本当はもっと大事に、大切にしていかなくては、守ることなどできませんね。
▲おじゃまします!
子どもたちに約束していることは次の2つ。
1 植物を折ったり、根っこから抜いたりして持ち帰らないこと。
2 ゴミを捨てないこと。
捨てるどころか、子どもたちは落ちているゴミを見逃さず、拾いはじめました。
「ねえねえ、ゴミがあったよ」
「これは自然のものかな?」
と先生が問いかけると。
「ううん、違うよ」
「そうだね、これはプラスチックだね」
と拾ってゴミ袋へ。
先生たちも率先して拾います。
プラスチック製ものやビニールのゴミ袋などはとくに、野鳥や魚が食べて命を落とす危険性があります。他にもたばこの吸殻、ペットボトル…。自然がいっぱいに見える野川も、実は生き物たちには危険なゴミだらけ…。
美しいものばかり見せたくなりますが、子どもと一緒にゴミを拾い、そこにいる生き物たちのことが考えられたらいいですね。先ほど拾った蝶の亡骸は、先生が小さな穴を掘って、みんなで埋めました。
「土に返してあげようね」
生き物がいっぱい
ゴミの多さにショックを受けた編集部ですが、子どもたちはゴミ拾いと並行して生き物探しに夢中です。
子ども「バッタつかまえた!」
先生「わあ、大きいね」
子ども「きのこが生えてる!」
先生「ホントだ!昨日まで雨が降っていたからかな」
▲きのこ発見!「どこどこ〜?」子どもたちの頭の下に…(笑)
ちょっとした子どもたちの声も、先生たちは一人ひとり丁寧に拾っていきます。
子ども「あ、先生これ何だっけ?」
先生「数珠の実だね、懐かしいな〜。糸を通してネックレス作ったな〜子どもの頃」
子ども「へえ〜」
先生も楽しそう。
それにしても、子どもたちはいろんなものを見つけます。子どもと一緒にお散歩するだけで、私たち大人の世界も思いがけず広がるのが、とても新鮮!
「おっと、ヘビを見つけてしまった」
と、今度は先生の声。
「え〜どこどこ?」
「見せて見せて!」
子どもたちが一斉に集まってきます。
よ〜く見ると、茂みにじっと隠れているのがちらり。立派な模様が見えました。
▲茂みの真ん中あたり、目をこらすとヘビ柄が。
「アオダイショウかな。みんな気をつけて、そーっと見てごらん」
ちょっと怖いけれど、見たくてたまらない。好奇心はとどまるところを知りません。実は子どもたち、その前の週には同じ野川の河川敷で、ヘビの抜け殻を見つけたのだそう。あの抜け殻は、このヘビのものなのかな?想像が広がります。
おもちゃがなくても遊べるね
河原には小枝や葉っぱ、木の実などいろいろなものが落ちています。1枚の葉っぱと小さい枝を拾って、素敵な風車を作って遊ぶ女の子がいました。
枝の両端を持って、ふーっと息を吹きかけたら…クルクル。
▲ふーっ
「わ〜すごいね!自分で考えたの?」
と先生が言うと。
「うん!」とちょっと嬉しそうな女の子。
「いいな〜僕も作りたい!」
「わたしも〜」
子どもはおもちゃや道具がなくても、いくらでも遊べるんですね。
大人には、そんな姿がとてもまぶしい。
この水、本当にキレイなのかな?
調布市民の憩いの場でもある野川。一行は、源流から野川へと水が注ぎ込む水路出口に到着しました(佐須あたりにあります)。野川の源流は、国分寺崖線と言われる崖から染み出している地下水。雨が降って、何十年もかけて地面に染み込み、ろ過されて清らかな水となり湧き出しているのです。
▲勢いよく流れ出る水。湧き水が流れを集めてここまで!
周辺エリアのあちらこちらから湧き出す水は、いくつもの流れとなって野川に注ぎ込んでいます。その流れの一つが「佐須用水」。調布市佐須に残る貴重な田んぼや畑は、佐須用水の水を使っています。その佐須用水の流れが最後にたどり着くのが、ここなのです。
▲この「トンネル」の先に水源があるのですね〜。
冷たくて気持ちいい!ところが先生は「ここの水は本当にキレイなのかな?」と一言。
どういうこと?すぐ近くの崖下で湧き出した水が、数百メートルほどの用水路を通って流れ込んでいるのですから、清らかに違いないと思うのですが(実際、とても澄んだきれいな水に見えました)。
水質を調べてみよう
「じゃ〜ん」
と先生が取り出したのは、水質検査キット。
保育園の年長さんたちが「水質検査」を知っていることに驚きました。ここは先生たちのサポートがあってこそ。子どもたちと毎週のように、自分たちの地域に流れる川の水、湧き出す水のことを少しずつ深めているうちに、いつしか簡単に水質が調べられる検査キットを使って調べてみよう(※注)!ということになったのだといいます。
※注 この検査はあくまでも教育目的のための簡易的なもので、正確な数値までは測定できません。検査結果は気温などさまざまな条件にも左右されます。子どもたちが年間を通して、いろいろな場所や条件で水質を測ることで、変化に気づくことを目的に行っています。
▲水温は20度でした。
子どもの「知りたい」気持ちにできるだけ応えたいという先生たちの思いを感じます。そんな姿勢を親としてわが子に接するときに活かせたら、きっと親子の世界が広がることでしょう。
さて、本題に戻ってこの水の水質はいかに?
▲コップに汲んだ水を検査キットのパックに入れます。
▲入れてすぐはピンク。
色が変わったら水は「キレイではない」のですが…。
この検査は、水の酸素濃度を測ることができるというもの。水中の酸素が低いほど「青」に近づきます。ここの水質は、酸素濃度が低いことがわかりました。酸素濃度が低いということは、水源地から野川まで流れてくるまでの間に本来含まれていた酸素が使われているということ。
「水が流れる水路などが有機物が多い環境だと、そこにいる微生物が有機物を分解します。その際に酸素を消費するため、結果として水中の酸素濃度が低くなるのです」(光橋翠さん)
水がキレイ=生き物が住みやすいかどうかを調べる検査だったのですね。
▲半年ほどの「自然環境保育」はこんな形にも。保育園の壁面。
パイオニアキッズの子どもたちは、毎日の保育の中で少しずつ「水」への興味を広げ、取材した段階では野川の水源がカニ山にあると知っていました。さあ野川を後にいよいよ水源のかに山へGO!続きは次回コラムをお楽しみに!
(撮影 赤石雅紀 取材・文 竹中裕子)
パイオニアキッズ菊野台園(ぱいおにあきっずきくのだいえん) 調布市菊野台の住宅街に立つ、認可保育園。乳児期から ニュージーランドの教育省から正式に許可を得て、ナショナルカリキュラム「テ・ファリキ」を活用し、自らの意志で遊びを決めてそれぞれの部屋へ行く「コーナー保育」や「異年齢保育」が行われています。また、北欧で盛んな「森の幼稚園」の概念も取り入れ、積極的に戸外活動を行っています。