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「育てる」こどもごはん

第3回
パイオニアキッズつつじケ丘園
「新米っておいしいね」 季節のごはん

2019年11月27日 公開

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毎日の食卓に「季節」を取り入れていますか?ハードルが高そうに思えますが、実はほんのちょっとしたことでいいのです。でも、その「ちょっとしたこと」って何なのでしょう。

今回のテーマは「季節」。調布市内にある認可保育園「パイオニアキッズ」では、保育全般に季節を取り入れているとのこと。早速、のりこ先生と管理栄養士のめぐみ先生にお話をうかがいました。

 

二十四節気七十二候という考え方

 

そもそも季節って「四季」というぐらいだから4種類?いえいえ、日本には古来から四季折々をさらに細やかに感じるための暦、二十四節気があります。それはたとえば「立春、夏至、立秋、節分…」などで知られる、季節を表すもの。1年を春夏秋冬の4つに分け、さらに一つの季節を6つに分けています。パイオニアキッズではこの二十四節気をさらに細かく分けた「二十四節気七十二候」を保育に取り入れています。うーん、ちょっとしたことといっても…のりこ先生、なんだか難しそうですよ。

 

「実はね、私自身もよく知らなかったから始めは少し勉強しました。日本は四季折々の豊かさがありますが、その豊かさをどうやって伝えていけばいいのかって思いますよね。そんなときに『二十四節気七十二候』が実はとても役に立つことに気づきました」(のりこ先生)

つまり、季節を捉える便利なツールでもあるということですね。実際、子どもにもわかりやすい絵本が用意されていました。取材した日の暦を見ると、その日は二十四節気の「霜降(そうこう)」七十二候の「霎時施(こさめときどきふる)」にあたりました。絵本のページを開きながら、先生が子どもたちに語りかけます。

「今日は『霜降(そうこう)』っていう日だよね。霜が降りるっていう字が書いてあるから…今日は暑いのかな?それとも寒いのかなあ」(ゆきの先生)

「さむいー!」(子どもたち)

「そうだね、だんだん寒くなってきたよね」(ゆきの先生)

子どもたちは絵本に描かれている絵や先生とのおしゃべりから、自然と季節を感じているようです。日頃から野川などの自然環境が豊かな地域でたっぷりと外遊びをする中で、季節ごとの空気、草木の色合いや生き物たちなどの様子に触れ、季節の移ろいにも実感があるのかもしれません。

「子どもたちにとって、自然は身近なものです。身近なものを保育に取り入れることで、子どもたちが自然と季節の移り変わりに気づけるんです。もちろん七十二候は難しいところもありますから、子どもたちが落とし込めるような内容で伝えています。たとえば『玄鳥去(つばめさる)』や『桜始開(さくらはじめてひらく)』などは子どもたちもわかりやすいようです」(のりこ先生)

 

「新米」って何のこと?

 

この日はめぐみ先生が子どもたちにあるものを見せてくれました。それは袋に入ったお米です。

「みんな、いつものお米と何が違うかわかる?」

「え〜、なんだろう」

「わからないなあ」

実はめぐみ先生が持ってきてくれたのは、この秋収穫したばかりの「新米」でした。パッケージに「新米」と書かれたシールが貼ってあります。

「新しいお米っていう意味なの。秋はお米ができる季節で、とれたてのお米を新米っていうのよ」

「どんな味かな」

「しんまいって知ってる!」

いろんな声が上がり、子どもたちは興味津津。

実は、園庭には小さな「田んぼ」があります。初夏に田植えをした稲が育ち、つい先日収穫したばかり。お部屋のあちらこちらに刈り取った稲が干してありました。

子どもたちが籾を手にとり、殻をむき始めました。

「(紙を見ながら)茶色になった籾の殻をむくと…茶色い粒が出てきたよね。これは玄米っていうの。みんなも食べたことがあるよね」(ゆきの先生)

(パイオニアキッズの給食には、玄米ごはんの日もあるのです)

 

「白くない!」

「お米とちがう〜」

「玄米食べたことある!」

 

めぐみさんが玄米を小さなすり鉢でゴリゴリと擦り始めました。

「こうするとね(ゴリゴリ)、まわり(の皮)が少しずつとれていくんだけど(ゴリゴリ)…なかなか取れないなあ(笑)。粉になった皮をフーっと吹くと白いお米が残るのよ」(めぐみ先生)

 

自分たちで時間をかけて育てた稲の殻をむいたり、すり鉢で精米にチャレンジしてみたり…そんな楽しい「体験」が子どもたちの心に刻まれていくのかもしれません。

 

「じゃあ、今日はこの新米を食べてみようか!」(ゆきの先生)

「やった〜」

「うん、食べる!」

「わーい」

この展開、最高ですね!!!給食の時間が、とても楽しみになりました。

 

献立に季節を取り入れる

 

この日の給食はお米の産地でもある秋田の郷土料理。寒い地域の料理であること、新米の季節なのでお米の産地でもある秋田の料理を選んだとのことでした。

「給食を通して日本の食文化を伝えていきたいと思っています。今日は秋田料理のぼだっこ(鮭のごま塩焼き)と、新米。他に季節の食材を取り入れたキャベツとりんごのサラダに、寒い時期に体があたたまるようにと納豆汁を作ります」(めぐみ先生)

 

どれも本当に美味しそうですね。たまたまこの日は新米やら、旬の食材でもある鮭を秋田の郷土料理として提供しているので「秋」らしさが伝わりますが、毎日のこととなると季節を取り入れるのは大変なのでは?

 

「献立には意識して旬のものを取り入れています。たとえば今だったら秋ですから、里芋、ごぼう、鮭、ぶどう、梨などでしょうか。果物は手軽に季節を感じやすい食材だと思います。たとえば、給食でみかんを出し始める時期になると『そろそろぶどうが終わっちゃうね』という声が出るんです」(めぐみ先生)

 

その季節には旬のものをいただく…その繰り返しが、季節を感じる心を育てているのですね。お迎えに来た保護者の方が給食のサンプルを見て「あら初物ね!うらやましい」なんて親子で会話している様子も、保育園ではよくある光景なのだそう。

「旬のものは美味しいですよね。その食材が一番おいしい時期に食べてもらえたらいいな、と思っています」(めぐみ先生)

 

郷土料理だけでなく、行事など日本文化を意識した献立作りにも力を入れています。

「たとえば七草の季節には七草粥をおやつに。ただ作るだけではなくて、野川に七草を探しに出かけていき、その流れで七草粥を食べてもらったり。あ、もちろん七草の材料は園で準備したもので、野川の草ではありませんけれどね」(のりこ先生)

 

日々の体験と季節を意識した給食が、暮らしの中でひとつながりになっているから、違和感なく子どもたちの心に入っていくのかもしれません。

 

園庭で野菜を育てる

 

パイオニアキッズつつじケ丘園では、稲の他にもいろいろな野菜も育てています。収穫したばかりの里芋がゴロンと置いてありました。いずれ給食で提供される予定だそう。

園庭には小さな畑があります。ちょうど端境期ということでパセリが一株と、人参の小さな芽が出てきたところ。

小さい田んぼにはメダカがたくさん。ヤゴなども生息していたとのことで、ちょっとした生態系になっています。すぐ近くには子どもたちが作った「かかし」もいます。

 

 

 

「パセリを育てていたら、キアゲハの幼虫が見つかったんです。その日から、パセリを育てる目的が『幼虫を育てるため』に変わりました(笑)。田んぼは、毎年2月になると年長さんたちが土作りを始めます。そのまま卒園していくわけですが、土作りをした田んぼを、次年度の年長さんへとバトンタッチしているんです」(のりこ先生)

 

 

おいしいね!新米

 

たっぷり外遊びをした後は、お楽しみの給食です。

3歳以上の子どもたちは、自分が食べられる量を自分で皿に盛り付けるブッフェ方式。苦手なものはほんの少しだけ。でもほんの少しでも食べてみると案外美味しくて、おかわりする子も。

新米は美味しい!もりもりと食べています。鮭のごまみそ焼き「ぼだっこ」も人気です。

「味覚を育てるということは、見た目や香り、触感といった五感を育てることでもあります」とめぐみ先生。

大人になれば自分で選んで好きなものを食べるようになるわけですが、その土台を作るのが幼児期です。ご家庭ではたいへんかもしれませんが、少しずつでも旬を取り入れたり、日々の暮らしの中で季節を感じ取り、食事とも関連づけていくことで、五感を豊かに育んでいけたらいいですね。

執筆者 パイオニアキッズつつじケ丘園

パイオニアキッズつつじケ丘園

調布白雲福祉会が運営している、調布市の認可保育園です。つつじケ丘駅から徒歩3分という立地。建物は「おじいちゃん、おばあちゃんのおうち」をイメージした「和」の外装・内装。自然環境教育、食育にも力を入れています。

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