ラグビーワールドカップで盛り上がった調布市の2019年。一方で忘れてはいけないのが、10月12日の台風19号の被害です。調布市内でも床上浸水128件、床下浸水85件、その他強風の影響などで24件(12月24日時点)という大きな被害があり「調布市始まって以来初」の避難勧告が発令されました。
この台風後、現役の子育てママであるコサイト編集部スタッフたちからは「これまでなんとなく防災については考えていたけれど、あの日はすごく不安だった」「知り合いの話では避難所も結構大変だったみたい」などという声が続々と上がるように。
そこで編集部内で自主勉強会開催を企画。昨年末12月中旬に調布市の総合防災安全課の方による、出前講座(外部リンク)をお願いしました。
今回お話をしてくださったのは、調布市総務部総合防災安全課の中川昇さん、牛尾琢也さん、岸本大輝さん。講座のテーマは「みんなで進める災害対策(風水害編)」です。出前講座は、市内に在住、在勤、在学している5人以上で構成されたグループ、団体で申し込むことができます。詳しくは調布市のホームページ(外部リンク)をご覧ください。
とにかく大切なのは事前の準備!まずは「自助」を
災害は大きく分けて、地震による「震災」と台風などの大雨による「水災」の2種類に分けられますが、今回は「水災」に備える対策について学びました。水害はある程度予測ができる…つまり「事前の準備が可能」です。それでは具体的には何をすればいいのかを教えていただきました。
・大雨などが予想される場合は、気象情報を事前にチェックする。
・行政が発行している「洪水ハザードマップ(外部リンク)」で浸水の危険がある場所、避難経路などを把握し、安全な避難場所を確認しておく。
・通信網が遮断されることを想定し、ラジオを準備。コミュニティラジオ「調布FM 83.8MHzなど複数の情報収集手段を確認しておく(災害時は「調布FM 83.8MHz」にて調布市内の防災情報を発信します)。
また、震災水災にかかわらず必要なのが、食料や飲料水などの備蓄です。
・備蓄品は最低でも家族全員分を3日分(できれば1週間)用意する。忘れがちなのがトイレ。断水したらトイレは流せません(試しに流してみることはせず、住んでいる建物の下水道が壊れていないことを確認してから流すこと)。また、マンションの給水方式によっては停電になると給水ポンプが停止し、断水になる場合もあります。
・乳幼児家庭では特に「おむつ」「おしりふき」「ミルクセット(液体ミルク、使い捨て哺乳瓶、水)」「ベビーフード」などの用意を忘れずに。
被災した場合、公的な支援が届くまでには最低でも3日。場合によっては1週間以上届かない状況も想定されます。災害時に一番大切なことは、自分の身はできるだけ自分で守ること=自助なのだということを改めて知ることができました。
とくに水災の場合はある程度想定ができますから、しっかりと備えておかなくてはなりません。
避難所はホテルじゃない!
今回の台風19号で、調布市内でも避難勧告が発令され、避難所が開設されました。自然災害による開設は初めてとあって、編集部にも「〇〇の避難所は混乱があって大変だったらしい」「情報がうまく伝わっていなかったのでは」などという噂が聞こえてきました。行政はどこまで対応ができるものなのでしょう?
「各避難所には毛布やトイレなどの備蓄がありますが、これらの備蓄品で対応できるのは調布市の人口に対して1割程度の人たちの3日分だけ。もっと備蓄を増やしたくても備蓄場所に限界があるので難しいのです。ですから、災害時に備えた食料や水など各家庭での備蓄は必須なのです」(中川さん)
「ええ、1割!?」と驚きを隠せない編集部スタッフたち。たとえば自宅が浸水したり火災や倒壊で自宅を失った場合には避難所の備蓄食料で命をつなぐことになりますが、家が無事なのであればまずは自らが備蓄したもので数日間を耐えしのぐことが求められている…「家庭での備蓄」の重要性が身に染みてくるようなお話でした。
それはつまり、寸断されたインフラがもとに戻るまでの期間、安全が確認できている場合には自宅で待機という選択肢があるということ。
「避難所での生活は、ホテルとは違い決して快適なものではありません。『災害が起こったらとりあえず行く場所』ではないのです。命を守ることが第一なので、避難指示や避難勧告が出ていて浸水想定区域に入っている方は、もちろん迅速に避難してほしいですが、浸水の危険がなく生活に不安がなければ在宅避難や垂直避難(建物の上階への避難)をすることも考えてください。しっかりと危険を見極めた上で避難所に避難をするか在宅避難をするかの判断をお願いします」(牛尾さん)
たとえば避難所になる小学校の体育館は、多くの他人が一つの空間に集まるところ。実際に寝泊まりした経験がある牛尾さんによると、体育館の床にはある程度の弾力性が必要らしく、人が普通に歩くだけでも揺れを感じるほどなのだそう。そのため夜間もゆっくり眠れない人が多いのだとか。知りませんでした…!
「事前に予測のできる水災の場合は、あらかじめ安全な場所(標高の高いところ。たとえば多摩川の氾濫が予測される場合は府中崖線上のエリア)にある親戚の家や知人の家に一晩だけでも泊めてもらう、というのも一つ方法だと思います」(岸本さん)
何かあったらすぐに避難所へ行かなくては、と思いこんでいた編集部スタッフたちには目からうろこの「在宅避難」という選択肢。特に子どもがいると泣いたり騒いだりして迷惑になるのでは…と、避難所での生活は気にかかることが多いもの。いざというときに在宅避難できるためにも、日ごろの備えが重要だと痛感しました。
また、今回の災害ではネットやアラートメールなどの情報が混乱していたという声もありましたが、この件については現在調布市をはじめ、多摩川流域の自治体が連携し、情報網を強化する方向で急ぎ検討が進められているとのこと。今回の災害を教訓にし、次につながっていくといいですね。
「在宅避難」をしたら避難所へ届け出を
もうひとつ大事なことは、避難生活が長引く場合に「在宅避難」を選択する際、最寄りの避難所へ「在宅避難届け」をすると良いということ。一日一回くらいは避難所へ足を運び、炊き出しなどの最新情報の確認もしてください。また、その際は、できる限りで構いませんので、避難所でのちょっとしたお手伝いなど、避難者同士の助け合いも心掛けてください。とのお話でした。
講座を受けて、今まで知っていたようで知らなかったことが浮き彫りに。事前の準備の大切さに、スタッフ同士「きょうの夜早速非常用トイレを買い足そう」「家族と情報を共有しよう」などと会話をしながら帰路につきました。
後編では防災リュックの中身や講座をもとにでた意見などをご紹介します。