[コサイトサポーターPR]
子どもたちは「ごみ」に夢中!
小学校入学前、多くの子どもたちは新生活への期待にワクワクしています。
「小学校に入ったら、さんすうをがんばる!」
「かんじをたくさんおぼえたいな」
「べんきょうがたのしみ!」
もしかしたら、友達をたくさん作りたいという思いと同じぐらい「勉強」に期待を寄せている子どもも多いのではないでしょうか。幼児期はまさに「知りたい」ことがいっぱいです。学びの土台となる「好奇心」「知りたい気持ち」を育てる絶好のタイミング。とはいえ日々の暮らしの中で、親が子どもの「なぜ、どうして」にいちいち答えるのは大変なことでもあります。せめて毎日でなくても、ちょっとしたお出かけ時に子どもの言葉や興味に耳を傾け、いっしょに考える時間が持つことができたらいいですね。
このコラムでは、調布市菊野台にある「パイオニアキッズ菊野台園」で行われている保育を通して、子どもとの関わり方についてのヒントをご紹介しています。
連載3回目は3つある異年齢クラスの一つ「ぶるーきゃっと」にお邪魔しました。このクラスでは3年ほど前からずっと「ごみ」がテーマになっているとのこと。
え…?「ごみ」に夢中?
自発的に広がる「ごみ」への興味
パイオニアキッズは3歳になるとそれぞれが異年齢クラスに所属します。毎年、年長さん(5歳児)が卒園し、翌春には年少さん(3歳児)がそのクラスに加わるという流れです。「ぶるーきゃっと」では「ごみ」をテーマにして3年目。年長さんが、年下の子どもたちの手本となったり、教えてあげたり。年上の子どもたちの様子を見て、小さい子どもたちは刺激を受けているようです。
「大人が意図的に環境教育をしようと思って始めたことではありません。3年前、あるきっかけでクラスのお部屋にごみ箱を設置することになりました。そのときに『燃えるごみ』と『燃えないごみ』があることや、それ以外にも分別ができること、分別のために作られたマークがあること…という感じで、自然に子どもたちの興味が広がっていったのです」(園長先生)
やがて子どもたちは保育園の中だけでなく、日頃のお散歩でよく行く野川にもごみがたくさん落ちていることにも気づきました。野川の生き物たちのためにも川をきれいにしたい、ごみを拾おう、という気持ちが生まれ、子どもたちの「ごみ拾い」が始まりました。
ここでしっかりお伝えしておきたいことは、子どもたちの「ごみ拾い」も「調べる」活動も、決して大人の「押し付け」ではないということ。大人は、子どもたちが関心を持ったことはその世界を広げるちょっとしたお手伝いをしているだけ。わからなければ一緒に調べるし、考えるという姿勢がそこにありました。たまたま関心を持ったのが「ごみ」だっただけのことです。
子どもたちの「関心」を広げるために
ある日の「サークルタイム」にお邪魔しました。サークルタイムは、それぞれのクラスが取り組んでいるテーマについて、先生からの提案があったり子どもたちが自分たちの考えを話したりする時間です。
先生「このあいだは、スウェーデンの映像をみんなで見たよね、覚えているかな?」
子ども「うん!スウェーデンにはごみがなかった」
子ども「ごみをもやして、電気にしていた!」
子ども「あのね、ごみを6つの色にわけていたよ」
子ども「もえるごみで、お湯をつくっていた〜!」
子ども「えーと、お部屋をあたためていた!」
先生「そうだよね、スウェーデンではごみは…何だっけ?」
子ども「ごみはごみじゃなかったよ」
子ども「宝物だって!」
スウェーデンのごみ対策はとても進んでいて、基本的に「ごみ」はすべてリサイクル、リユースなどにより有効活用されているといいます。糞尿は肥料にしたり燃料にするなど、とにかく徹底しているのだそう。
先生「ほかにも何かあったかな?」
子ども「あのね、スウェーデンは外国からごみを買っているんだよ」
先生「そうそう!よく覚えていたね」
子ども「スウェーデンではごみは宝物だから!」
実はこういった「振り返り」が子どもたちの記憶や思い、感覚を呼び覚まし、次の興味関心を広げるポイントになっていました。ご家庭でも、その日子どもが興味を持ったことについて、食事のときなどに少し「振り返り」をすると、関心が広がることがあるかもしれません。
先生「保育園の周りにもごみがたくさん落ちているけれど、みんなはどうしたいんだっけ?」
子ども「キレイなまちにしたい!」
子ども「あのね、『ごみをすてないでください』っていう看板をつけたいけど…」
先生「調布市のきまりで、勝手に看板をかけることはできない。だから…これを作ったよね」
看板がダメなら…と考えたのがこの作戦!手作りのプレートを、お散歩のときに首からかけて、行き交う人達に「ごみをすてないで」とアピールしようというのです。
すると、ある子がふと言いました。
子ども「でもさ、ごみをすてていない人に『ごみをすてないで』っていえない…」
先生「確かにそうだよねえ。じゃ、何て言ったらいいと思う?」
子ども「すてている人がいたら『すてないでください』っていう」
先生「そうだね!でも捨てている人ってあまり見かけないなあ」
子ども「まちをキレイにしよう…かなあ」
子ども「そうだ!きょうりょくしてくださいっていえばいいんだ!」
先生「なるほど、その言い方ならいいね!」
想像以上に落ちていた「ごみ」
子どもたちと相談した結果、この日は保育園専用の駐輪場付近と、保育園周辺歩道のゴミ拾いに出かけることになりました。子どもたちの手には使い込まれた軍手。トングを持つ子もいます。
門を出てすぐ左手にある駐輪場で、早速ごみ探し。
拾ったごみは「これは燃えるよ!」「先生、これ燃えるかなあ」と口々に言いながら、先生が持つゴミ袋に分別していきます。小さい子たちも、年上の子たちにくっついて、ごみ探しに夢中です。
続いて歩道を歩きながら、落ちているごみを拾います。車道との境にある植え込み部分に顔をつっこんで探すと…。
「あ、あった!」
「わたしももみつけた!」
「先生!これプラごみ?」
ごみは少し見えにくいところに、でもたくさん落ちていました。子どもたちはごみ拾いの間にも近くを通り過ぎる人たちに、首からかけたプレートを見せながら「ごみをすてないでくださ〜い!」と訴えます(協力してください、とはなかなか言えませんでした)。
ちょうどそのとき、子どもたちの近くを調布市の「ごみ収集車」が通りかかりました。
プラスチックごみの日だったようで、手際よくごみを集めていきます。
まちをキレイにしている方たちに、子どもたちからは熱い尊敬の眼差しが注がれます。そして「ありがとうございま〜す、わたしたちもがんばります!ごみをへらします!」と大声援。収集の方たちも思わず笑顔で立ち止まり、手を振って応えてくれました。
園に戻ると、使っていた軍手をたらいの水で洗います。そして洗った水は…園庭の植栽にまきました。そうすれば水は下水ではなく、土壌によってろ過され、やがて地下水になるからです。
誰が捨てたの?
それにしても、たくさんのごみが集まりました。分別したそれぞれの袋にどっさり。タバコの吸い殻、お菓子などの袋、地面に埋もれて泥まみれになったレジ袋や、ジュースの缶、ペットボトル、紙類…。部屋に戻り、今日のごみ拾いを振り返りました。
先生「今日は、どんなごみが落ちていた?」
子ども「かみがたくさんおちていたよ」
子ども「タバコもたくさんあった!」
子ども「プラごみも!」
先生「(ホワイトボードに書き出しながら)保育園の駐輪場には、タバコの吸い殻がたくさん落ちていたよねえ」
子ども「だれがすてたのかなあ?」
子ども「もしかして、うちのお父さんかも?あっ!でもお父さんはタバコをすわないからちがうよ」
子ども「うちのママもすわないいよ!だからママじゃないよ」
先生「みんなのお父さんやお母さんは、捨てていないと思うなあ」
子ども「だれかがすてたのが、風でとんできのかもしれない!」
先生「なるほど、そうかもしれないね」
それぞれに感じたこと、疑問に思ったことを話せるのは、受け取る側の先生がしっかり受け止めてくれるからなのでしょう。考えることの「面白さ」を感じられることは、とても大切なことですね。
パイオニアキッズの先生たちは、決して環境問題、ごみ問題に詳しかったわけではありません。子どもたちと一緒に考え、わからないことは調べていくうちに、自然と関心を持つようになったのだといいます。先生自身もまた興味が湧いて、調べて、それを子どもたちに伝え、そこからさらに広がっていく…どこかワクワクするような、好循環が生まれているのです。日々の活動を保護者の方に伝えるため、壁面にはこんな掲示もありました。
子どもから教えてもらうこと
今回の同行取材でわかったことは、「落ちているごみは、大人が捨てたものがほとんど」だということ。それを子どもたちに拾ってもらっている現実を、ぜひ多くの大人に知ってほしいと感じました。
子どもが「なんでだろう」と考えるきっかけは、ごみに限らず、ごく身近なところにたくさんあります。そして「知りたい」という気持ちがフレッシュなうちに、調べたり体験したりすると、「知る喜び」を体感できます。決して特別なことではありません。親子の関わりを通して、子どもの学び、考えるチカラを育てていきたいものですね。
コラム「学ぶチカラ・考えるチカラ」も次回で4回目。「野鳥」を探しに野川に出かけます。こちらもどうぞお楽しみに!
パイオニアキッズ菊野台園(ぱいおにあきっずきくのだいえん) 調布市菊野台の住宅街に立つ、認可保育園。乳児期から ニュージーランドの教育省から正式に許可を得て、ナショナルカリキュラム「テ・ファリキ」を活用し、自らの意志で遊びを決めてそれぞれの部屋へ行く「コーナー保育」や「異年齢保育」が行われています。また、北欧で盛んな「森の幼稚園」の概念も取り入れ、積極的に戸外活動を行っています。