調布市内には私立の幼稚園が全部で15園あり、それぞれが特徴ある幼児教育を行っています。世間では保育園の待機児童問題がクローズアップされ、幼稚園でも「夏休み中の預かり保育」や「延長保育」などを取り入れるところが増えています。市内15園の代表が集う「調布市幼稚園協会」では、定期的に会議を開き、情報の共有、意見交換を行い、あらためて幼稚園が置かれている現状の厳しさを実感しているといいます。
折しも9月は幼稚園の説明会シーズン。今回は、幼稚園協会の会長であり、調布白菊幼稚園理事長の吉田勝重さんと、染地幼稚園園長の原房子さんのお二人にインタビュー。染地幼稚園のお部屋で、調布市の幼稚園としての思いや、これからの社会を見据えた展望などにいついてお話をうかがいました。
コサイト 今日はお二人に、調布市の幼稚園全体を見渡したお話を聞かせていただきたいと思っているのですが、まずはおひとりずつ自己紹介をお願いします。
吉田 調布白菊幼稚園理事長の吉田です。うちの幼稚園は今年で51年目となりました。調布市の幼稚園協会では昨年度から会長を務めています。幼稚園協会では、年に6回ほど会議を行い、近況報告や情報共有などをしてきました。
▲調布白菊幼稚園理事長の吉田勝重さん。
コサイト 市内では次々と新しい認可保育園ができていますね。幼稚園協会としてはそのあたりも課題として、話し合われているのですか?
吉田 はい。これまでと同じような運営では、幼稚園は厳しい状況にあると言わざるを得ませんので。それぞれの園が工夫をし、さまざまな取り組みを行っていますし、幼稚園協会としてもみなさんの意見をとりまとめ、行政との連携などに対しても積極的に動いていきたいと考えているところです。もちろん、調布市の幼稚園はみな私立ですから。それぞれ思いや特徴があります。そこはきちんと尊重していかなくてはなりませんが。
コサイト 調布市の幼稚園として、ひとつの考えを示していきたいということですね。
吉田 長年、幼稚園を運営してきた者としては、待機児童が増え、幼稚園が減っていくという状況を黙って見ているわけにはいきませんので。
コサイト 原さんは、染地幼稚園には長年お勤めになっていらっしゃるそうですね。
原 長いんですよ(笑)。私は平成元年から染地幼稚園の園長を務めています。それ以前も染地幼稚園で働いていたので、そろそろ40年になりますか。本当にたくさんの卒園児を送り出してきました。
▲染地幼稚園園長の原房子さん。
コサイト 染地幼稚園は、子どもを通わせたお母さんたちがすごくこの幼稚園への愛が深いという印象を持ったことがあります。独特の文化があるというか、地域愛というか…。
原 確かに、長年受け継がれている染地幼稚園ならではの文化があると思います。そしてみなさん、それがいいと思って入園してきてくださっていると感じています。
コサイト それに、染地幼稚園で働いている補助の先生がたは、多くが卒園児のお母さんたちだとか。わが子を通わせて「いい」と思えるからこそですね。素敵です。
原 そうなのです。ありがたいことに、みなさん10年以上働き続けてくださるので、伝統の屋台骨が揺るがないという強みがあります。
コサイト 文化が脈々と受け継がれているのは理由があるのですね、すごい…。このご近所の方が多いのでしょうか。
原 そうです。お子さんが地元で進学している方も多いので、卒園児たちがその後も頑張っている様子なども伝わってきて嬉しい限りで、励みになります!
幼稚園に預けて働く
コサイト 幼稚園はそれぞれ特徴がありますね。染地幼稚園でも働くお母さんは増えているのですか?
原 パートタイムで働いている方は多いです。全体の…6割程度でしょうか。
コサイト ええ!そんなにいらっしゃるとは!おそらく、10年ぐらい前は幼稚園にお子さんを通わせている方の大半が専業主婦だったのではないかと思うのですけれど。幼稚園を取り巻く状況も大きく変わってきているのですね。
吉田 そうだと思います。でもまだ「働くなら保育園」と思っている方は多いとも感じます。だから私たち幼稚園協会としては「働いている人でも幼稚園に通わせることができる」ということをお伝えしていきたいのです。実際、市内の幼稚園の多くは「延長保育」を取り入れています。また、夏休みは夏の預かり保育やプール活動などを実施している園がほとんどで、そういうものを上手に利用しながらお仕事をしているお母さんはたくさんいらっしゃいます。
原 本当に、幼稚園はここ数年で随分変わったと思いますよ。
コサイト 幼稚園も社会の変化に対応しているということですね。
吉田 私たちも、お母さんたちの多様なニーズに応えていく必要があると思っています。働き方によっては幼稚園という選択肢もあるということを、みなさんに知っていただきたいですね。
感謝の気持ちを伝える
原 ただ、お子さんを預ける場合は、ぜひお願いしたいことがあるんですよ。
コサイト と言いますと?
原 夕方、お母さんが迎えに来るまで精一杯頑張っているお子さんに、ぜひ感謝の気持ちを表していただきたいなと。「お母さんが働いている間、いい子でいてくれてありがとう」って。
コサイト ああ、それは幼稚園、保育園に関係なく「預けて働く」お母さんたちにお伝えしたいお言葉です!私自身、子育て中にできていたかというと…。
原 中には、お母さんと離れるのが辛いお子さんもいます。頑張って待っている姿を見ていると…ね。
コサイト そうですよね…夕方遅くなると心細くなることだってありますよね。そんな子どもたちに寄り添ってくださっている先生方にも、感謝しなくては…。なんていうか、サービスがあって当たり前と思いがちですけれど。
原 うれしいですね!職員も「ありがとうございます」なんて感謝されたら、もっとやる気になりますよ(笑)。そんなちょっとしたコミュニケーションがあるといいですね。
吉田 つい預かりにばかり目が行きがちですが、ぜひ幼稚園ならではの良さもぜひ知ってほしいと思います。ぜひ、説明会などの機会に、足を運んで、見て、感じていただけたら嬉しいです。
幼稚園の良さ…幼児教育だからこそできること、幼稚園ならではの魅力とはどのようなものなのでしょうか。来週公開のインタビュー後編で詳しくご紹介しますので、そちらもどうぞお楽しみに。
写真左・吉田勝重(よしだ・かつしげ) 調布白菊幼稚園理事長、調布市幼稚園協会会長。写真右・原房子(はら・ふさこ)染地幼稚園園長。