ヤングケアラーについてご存知ですか?一般には、本来は大人が担うと想定されている家事や家族の世話(育児や介護)などを日常的に行っている、18歳未満の子どものことをいいます。
調布市では、令和4年度に「調布市子どもの生活実態に関する調査(ヤングケアラー実態調査)」を行い、その結果を調布市HPで公表しています。調査結果によると「(家庭内で)世話をしている人がいますか」という設問に対して「世話をしている人がいる」と回答したのは、小学生が11.1%、中学生が.6.6%、高校世代が3.3%、大学生世代が4.1%。少なからず存在していることが推察される結果となりました。
令和5年度から、ヤングケアラーコーディネーターを配置
調布市では、家庭内の問題として見えづらいヤングケアラーを早期に発見し、家族の状況に応じた適切な支援につなげるため、公益財団法人調布ゆうあい福祉公社(外部リンク)にヤングケアラー・コーディネーター1名を配置しました。令和5年度から、主に相談や啓発活動などを中心活動しています。
コサイト編集部では、ヤングケアラー・コーディネーターの高橋さん(ゆうあい福祉公社)と、共に相談支援を行っている調布市子ども家庭支援センターすこやか(以下「すこやか」)の小泉さんにお話を伺いました。
「ヤングケアラーが言葉として知られるようになったのは最近のことですが、実はずっと以前から存在していた問題だと思います。令和4年度の調査でその存在があらためてわかり、支援の必要性が明らかになりました。そこで調布市では『すこやか』と、福祉分野に通じている『ゆうあい福祉公社』が連携。互いの専門的な知見とスキルを活かし、ヤングケアラーの早期発見、適切な支援につなげていきたいと考えています」(小泉さん)
「初めての取り組みということもあり、手探りで活動をスタートしました。(半年ほど経過した)今は、少しずつ当事者のお子さんに関わることができるようになってきたところです。連絡をいただいたら、まずはそのお子さんや家庭の状況をふまえつつ、『すこやか』と一緒に何ができるかを考えます。そして無理なアプローチはせず、さりげなく、少しずつ関係を作っていくよう心がけています」(高橋さん)
家庭内のことでもあり、支援が入ることを嫌がるケースが多いのだそう。
「背景はみな違いますが、子どもたちは『大丈夫です』と、元気そうに話してくれることが多いです。子どもたち自身がヤングケアラーであると気づいていないこともありますし、その状態が当たり前のことだと感じている場合もあるかもしれません。『大丈夫』と言う子どもたちの言葉を否定することはできません。そもそもヤングケアラーは否定される存在ではありませんし、『子どもの思いを無視して支援さえ入ればいい』という考え方も違うのではないかと思っています。だから子どもたちには『苦しくなったり、疑問を感じたりしたら、いつでも遠慮なく話に来てね』と伝えています」(高橋さん)
気軽に話せる場、話せる相手があることが、まずは大切なのですね。
「私たち『すこやか』は、ヤングケアラー・コーディネーターと連携するようになり、より丁寧に子どもたちやその家族の話を聞く機会を持てるようになったと感じています。調布市としては、子どものタイミングで、いつでも相談できる場所、人がいるという環境があることが重要だと考えています。少しずつ子どもたちとの関係を作り、子どもたちの意見を尊重すること、大人が勝手に子どもへの支援を決めないことが重要なのです。会って話して、その子に合った支援を作っていかなくてはならないと思います」(小泉さん)
「ヤングケアラーかも?」と思ったら
もし身近に「ヤングケアラーかもしれない」子どもがいると気づいたとき、私たちはどうしたらいいのでしょう。
「子ども家庭支援センターすこやかでも、ヤングケアラー・コーディネーターでも、どちらでも構いませんので、迷わず連絡してください。当事者に対して、誰かから連絡があったかなどを伝えることはありませんし、匿名でのご連絡でも大丈夫です」(高橋さん)
●連絡先
子ども家庭支援センターすこやか
042-481-7731ゆうあい福祉公社ヤングケアラー・コーディネーター
042-481-7711
yc-jusan@chofu-yu-ai.or.jp
調布市では関係機関(教育、子ども、福祉、医療分野)への調査(令和4年度)も行っていますが、ヤングケアラーについては「具体的な内容まで知らない」「支援方法までは知らない」と回答した機関が8割以上という結果が出ています。
「私の仕事は、ヤングケアラーやその支援についての啓発活動も含まれています。多くの方とお話をする中で『(そのような子どもが)本当にいるの?』と問われることも少なくありません。まだまだ知られていない存在なのだなあと感じています。ぜひ、地域には家族の世話を日常的に行っている子どもたちがいること、支援の手段があることを広く知っていただきたいと思っています」(高橋さん)